「手元の作業に集中させるゆとりを与えない」のが共通点

この手の「『指示通りにできない人間』製造機」に出会ってしまったとき、私は次のように克服した。「すみません、情報が多すぎて覚えきれないんで、私が質問したことだけシンプルに教えて頂けますか?」と頼んで、目の前の現象を観察し、疑問に思ったことを質問することにした。「これはどうするんですか?」と訊く。すると「あ、それはね、こうするんだけど、そうしない場合はどうなるかというと……」と、また果てしなく言葉がドバーッと来るので制止して、「すみません、一つ一つお尋ねするので、答えは一つだけで」とお願いし、自分が観察して疑問に思ったことに答えてもらうことで、仕組みを理解するように努めた。

「『指示通りにできない人間』製造機」には、上記のように、ろくに指示を出さずに厳しく接するタイプ、指示を事細かに大量に出して相手をパンクさせてしまうタイプ、の2種類があるように思う。そしてこの2種類に共通しているのが、「手元の作業に集中させるゆとりを与えない」ことだ。

指示通りできない人は「監視の目」を恐れている

指示が多いか少ないかが問題なのではなく、自分の出した指示通りにやっているかどうかを見てくる「監視の目」が怖いのだろう。その目が、視線が、言葉が怖いから、手元の作業よりも、上司の視線や顔色ばかりに意識がフォーカスし、目の前の現象を観察するゆとりを失い、どうすればよいのかを考える余裕も失い、パニックになってしまうのだろう。

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私自身が「指示通りできない人間」だったので、どう指導したらそうならずに済むのか、考えるようになった。いろいろ試行錯誤した結果、最も有効なのは「私が見ている間は安心して失敗してください。むしろ失敗を楽しんでください。私は失敗が大好きなので」と伝えることだった。

仕事を始めたばかりの新人には、危険のない、失敗しても差し支えない作業を選び、一度教えれば頭に入る程度の指示に絞って作業してもらう。そしてあえて教えない部分を残して、わざと失敗するように誘導する。すると案の定、失敗してくれる。