酵素は熱に弱い
例えば、麹菌の出したプロテアーゼ(酵素)を、私たちが腸で食べ物の消化にそのまま使うということはできません。
もしも、食べ物として食べた酵素が体内でも働いたら、人間の身体もタンパク質でできていますから、内臓や血管などがドロドロに溶けてしまいます。
また、酵素はタンパク質なので熱に弱いです。
肉や魚、卵などに熱を加えると色が変わったり固くなったりして、まるで違う物質のようになりますが、それはタンパク質が変化するからです。
同じように、酵素も熱を加えると変化します。熱を加えて変化してしまうと酵素として働くことはできません。
酵素そのものが健康に良いわけではない
では、酵素が体内で働くわけではないのに、なぜ、発酵食品が身体に良いのでしょうか。
それは、微生物が出す酵素が切り刻んだ、消化がよく、様々な栄養が豊富に含まれた食品を食べるからです。
しかし、「酵素」そのものが栄養素のように何か健康に良い物質である、というイメージは根強いです。
さらに、「酵素は熱に弱い」「酵素は生き物である」というイメージもあり、「発酵食品は生で食べなくては酵素が死んでしまうから意味がない」という話が生まれます。
私もよく、「味噌汁は加熱するから酵素が死んでしまうという話を聞いたのですが?」という質問を受けます。これは、誤解に誤解が重なった質問です。
このような誤解は、日本特有のものです。私が交流する海外の発酵愛好家の方で、このような勘違いをされている方はほぼいらっしゃいません。
そもそも、英語で酵母はYeast(イースト)、酵素はEnzyme(エンザイム)と表記します。ですから、日本語における「酵母」と「酵素」のように字面からの勘違いが起きようがないのです。
味噌そのものが、微生物が酵素の力でたくさん栄養を生み出した素晴らしい発酵食品なので、安心して味噌汁を加熱して良いとお伝えしたいです。
発酵食品が身体に良いのは、酵素によって産み出された様々な栄養のおかげなのです。