今最も注目を集めている「ケトン食」

感染症予防と食について今最も注目を集めているのは「ケトン食」です。元はてんかんの治療食として臨床応用されてきたダイエット法(ケトジェニック・ダイエット)で、体内で生成されるケトン体に注目した食事法を指します。

新鮮なフルーツと野菜
写真=iStock.com/AlexRaths
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ケトン体は脂肪細胞が分解されるときに生じる物質で、体内でブドウ糖がなくなったときにはじめてエネルギーとして利用できる物質です。血中のブドウ糖がなくなると、肝臓に蓄えられたグリコーゲンからブドウ糖が作られます。それも不足すると今度は肝臓がたんぱく質を分解したアミノ酸からブドウ糖を合成しますが、その頃には全身の細胞の主なエネルギー源は脂肪酸を分解したケトン体に切り替わっています。つまり、糖の原料である炭水化物を減らすことが、ケトン体をエネルギー源とする「ケトン回路」が働く状況をつくり出すのです。

これまでケトン食は認知症予防や減量効果などで注目されてきましたが、免疫力についても研究が進んできました。そして19年末、米国エール大学医学部の岩崎明子教授らの研究チームが、ケトン食にインフルエンザに対する予防効果があることを報告。マウスを使った実験ですが、ケトン食を与えられたマウスはそうでないマウスに比べて、インフルエンザによる死亡率が優位に低かったというのです。研究チームによれば、ケトン食を与えられたマウスの肺には細菌感染、ウイルス感染や細胞のがん化に伴うストレスに反応して活性化されるガンマ・デルタT細胞が増加していたといいます。