かつて世界は「日本式」を懸命に学んだ

どうしてアメリカやヨーロッパが、早くから官民が連携した産業戦略を考えるようになったのかといえば、その原点はかつての日本経済の躍進にあったのかもしれません。

1979年には、日本経済の成長要因を分析した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(著:エズラ・ヴォーゲル)という本が出されて世界的なベストセラーになりました。

欧米では、日本の生産システム、とくにトヨタの生産方式=TPSを学ぼうという機運が高まっていました。TPS(Toyota Production System)は、必要なものを必要なだけムダなく生産していくための管理システムです。

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マサチューセッツ工科大学でもTPSが研究され、その成果は「リーン生産方式(Lean Product System)」としてまとめられました。Leanには「贅肉ぜいにくがとれた状態」という意味があるように、徹底してムダを省くやり方を考えたもので、リーン生産方式≒TPSと見られる場合がほとんどです。

1984年には『ザ・ゴール』(著:エリヤフ・ゴールドラット)という本が出て、やはりベストセラーになりました。小説仕立ての本書は、TPSを読み解き、「TOC(Theory of Constraints=制約条件の理論)」について説明しています。

トヨタ以外の日本企業はTPSをうまく応用できなかった

『ザ・ゴール』は長く日本語訳が出版されずにいました。日本人には内容を知られたくなかったというのが理由だそうです。日本人がさらに生産効率を高めるのをおそれたからだと言われています。

アメリカは、日本式、トヨタ式を学んで生産効率を高めて、ドイツはそのアメリカから学んできました。

リーン生産方式≒TPSは、あらゆる産業で現場ナイズされていき、そこに後年、ITを掛け合わせていったと見ることもできます。

そうして欧米は、情報化、デジタル化を進めていきました。しかし日本は、本家のトヨタを除けばTPSをうまく応用できず、遅れをとってしまったわけです。

ドイツでは標準化の取り組みに対する実証実験までが行われるようになっています。

ハノーファーメッセ2023でも「How Catena-X Works――GAIA-X Ready Architecture」という展示がありました。

Catena-Xを介して、VolkswagenとBASFの工場で、同じデータシステムを運用していくフレームワークができていることが示されました。トレース情報も稼働情報も電力情報も共有されています。