日本のデジタル化の遅れは、生産現場でも深刻な課題になっている。製造業の現場をYouTubeで解説しているものづくり太郎さんは「私は日本のレベルが低いとは思わない。むしろ、優秀すぎたためにデジタル化が遅れたと考えている」という――。

※本稿は、ものづくり太郎『日本メーカー超進化論 デジタル統合で製造業は生まれ変わる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

自動車工場の製造ライン
写真=iStock.com/gerenme
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日本が遅れた理由は優秀すぎたから?

拙著『日本メーカー超進化論 デジタル統合で製造業は生まれ変わる』(KADOKAWA)を読まれた方の中には、日本の製造業に批判的な内容が多いのではないかという印象を持たれた人もいるかと思います。

しかし、好きこのんで批判をしているわけではありません。問題点などをまず示していかなければ改善につながらないと考えているので、包み隠さず書いているだけです。

ものづくり太郎は、誰より日本の製造業を応援しています。その気持ちがホンモノだということはご理解いただければと思います。

日本の製造業に救いはないのかといえば、そんなふうにはまったく考えていません。本稿では、あらためて日本の問題点と課題を整理して、ドイツをはじめとしてヨーロッパが進めてきた改革とも比較しながら、日本の長所、希望と言える部分を紹介していきたいと考えています。

まず確認しておきたいのは、日本の製造業では、なぜこれだけデジタル化が遅れたのかということです。標準化の遅れともつなげて考えられることであり、ある意味、日本人の優秀さの裏返しと言えるのかもしれません。

学校のテストもいまだに手作業で採点している

例えば、教育現場です。

テストの採点をする教師は、いまだに手作業で答案に○を付けたり×を打ったりしている場合がほとんどです。ICT(情報通信技術)を利用して、デジタルで集計していけばいいのではないかと思ってしまいます。

今は学校でタブレットが配布されて、教材も定期的にダウンロードできるようになっています。テストもタブレットで行うようにすれば、採点も成績の管理もデジタル化するのは難しいことではありません。

導入している学校もあるのかもしれませんが、全国の学校が一律に変わっていくことはなかなか望みにくいようです。

通知表の付け方も全国で標準化されていないので、学校ごとのやり方を受け継いでいくのが自然になっているためです。それでも不満を漏らさず、なんとかやってしまいます。そういう気質と適応力があるからこそ、標準化、デジタル化が遅れたという見方もできなくはありません。

製造業の世界も同じです。デンソーなどの企業がいまだに二次元データをやり取りしている根本的な理由がどこにあるかといえば“これまでそれでやってこられていた”という事実が大きいのでしょう。各社各様ですり合わせのルールをつくって対応していく優秀さがあったので、個別に最適化ができていたということです。