トヨタの経営思想は、問題との向き合い方に表れる

2月13日に開かれた佐藤社長の記者会見を例にとろう。企業不祥事の会見は、たいていトップが謝罪の作法に則ってタテマエを述べるに留まるのに対して、佐藤社長は不正が起きた経緯と背景を具体的に説明した。

2016年に子会社化して以降、トヨタはダイハツの経営に関与してきた。ただし、問題を起こした小型車については、ダイハツの強みであることから、リスペクトもあって現場にはタッチしなかった。

佐藤社長の認識では、小型車の現場を放任していたのは経営の責任である。再発防止策としては、今後は小型車の現場もしっかり管理していくと説明していた。タテマエや抽象論でなく、責任の所在を明確にし、経営の具体的な行動を示している。このあたりに違いが見える。

佐藤社長の説明に垣間見えたのは、「常に問題を見える化し、根治治療に取り組むことで組織は進化する」という企業観、経営観だ。どんな企業にも問題と呼べるものはある。問題から目をそむけ、問題を隠そうとする経営者とは異なり、佐藤社長はじめトヨタの経営陣は正面から問題に向き合い、常に根治治療を目指す。会社、組織の本質をどう捉えるかの問題である。

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豊田章男流のガバナンスとは

豊田会長が1月30日に不正問題について語ったときも同様の印象を受けた。再発防止策を問われ、「今回不正を起こした会社は、やってはいけないことをやりました。それに対しては、会社をつくり直す覚悟でやらざるを得ないと思っています」と答えていたのは印象的だった。

豊田会長は、各社のトップや現場リーダーに「私がトヨタという会社の主権を現場に戻した、商品に戻したということを一度ご自身でお考えください」と話したという。会社の主権を現場に戻し、立場や出身にかかわりなく、経営に参画できる体制にしたのが、豊田章男流のガバナンスだという説明もあった。

聞く人によっては「不遜な態度」と感じるほど、自らの信念に基づき、トップの責任を果たす姿勢がうかがえる謝罪の言葉だった。