福井県の名産品「へしこ」もノルウェー産
日本のサバといえば、大分県で獲れる「関さば」や、宮城県産の「金華さば」、神奈川県産の「松輪サバ」といったブランド魚が知られている。こうした高級魚は別として、サバは全国各地で水揚げされるポピュラーな魚種。アジやイワシ、サンマなどと同様に青魚で「大衆魚」とも呼ばれ、たくさん獲れて「安い魚」というイメージがある。
サンマのように歴史的な不漁に見舞われている魚でさえ、輸入に頼っているわけではないのに、日本のサバ消費の半分以上がノルウェー産とは、さすがに言いすぎではないか……と思いきや、残念ながら嘘ではないのだ。
かなり以前からノルウェー産は日本に浸透しており、今やなくてはならない存在となっている。スーパーや弁当、定食屋チェーンだってノルウェー産を中心に扱っている。三陸産の〆サバや、福井県などの名産品「へしこ」に使われるのも、国産ではなくなっている。どういうわけか。
漁獲量の多さではマイワシ、ホタテガイに次いで3位
日本のサバ漁獲量は、2022年が合計約32万トン(農林水産省「令和4年漁業・養殖業生産統計」)。種類別ではマイワシ、ホタテガイに次いで3番目に多く、4位のカツオ(約19万1000トン)を大きく引き離している。
ただ、この数字は「サバ類」として、マサバ・ゴマサバを合わせた生産量である。ともにサバ科の魚で、東日本でお馴染みのマサバに対し、西日本で好まれてきたゴマサバは、腹にゴマ状の斑点があるのが特徴だ。
サバ類は、巻き網漁や定置網漁などさまざまな漁法で漁獲され、漁港で水揚げされるが、2魚種は漁場が同じことが多く、混獲が当たり前。水揚げ時に分けられないのだ。一方、イワシなら、マイワシやカタクチイワシ、ウルメイワシといった種類があるが、これらは漁場が分かれることが多く、漁獲統計上も別カウントされている。
市場価値としては、おおむねマサバのほうが高い。ともに大型魚であれば食用として生のまま流通するが、一般にマサバのほうが脂の乗りが良くおいしいといわれる。東京・豊洲市場(江東区)では、同じ大きさならマサバのほうが2〜3割ほど高い。
時期的には例外もあって、太平洋産など「夏場の産卵期にはマサバの脂の乗りが落ちるのに対し、ゴマは逆に脂が乗って、マサバよりも高く売れることがある」と同市場の競り人。
ただしそれも大型魚に限った話で、小型のサバ・ゴマサバは食用ではなく、養殖魚の餌などに使われる。これが常態化しており、水揚げ時に一緒くたにされたまま、冷凍加工されることが多い。漁港関係者によれば、ゴマサバも小さいと斑点がはっきりしないため、マサバとの判別はしにくく、餌用ならば選別の必要もないということだ。
全国レベルではかつて、ゴマサバのほうが優勢だったものの、近年はマサバの水揚げが主力だ。したがって今回は、マサバをイメージして「サバ」の話を紹介したい。