TVerとSVODの利用者でも差

この韓流要素は、「TVer(※1)を頻繁に使う人」と「SVOD(※2)の毎日利用者」との間で、視聴率推移に大きな差を生じさせた。「君ここ」はTVer利用者の視聴率がかなり高いが、逆にSVOD毎日利用者は低くなった。

※広告掲載型の無料動画配信サービス:他にYouTube、ABEMA(今回分析のデータはTVerのみが対象)
※2定額制動画配信サービス:他にNetflix、Hulu、DAZN

スイッチメディア「TVAL」データから筆者作成

グラフのデータはリアルタイムでドラマを見る人の多寡を示す。つまりTVerの見逃しで見ようと思えば見られるのに、あえて一刻も早く見られる放送に来ている人がかなりいたということだ。ところがSVODを毎日見るような、例えば海外ドラマや韓流ドラマも見る機会の多い人は、残念ながら「君ここ」には食指があまり動かなかったようだ。

逆に「Eye Love You」では、TVerの人は初回で低かったが、その後急伸した。同時にSVODの人は、「君ここ」より高い数字で推移した。やはり韓流に反応してきた人が、チェ・ジョンヒョプに見事に刺激されたようだ。さらに同ドラマにより韓流に目覚め、SVODの利用を始める人が一段と増えそうだ。

「韓流恋愛ものとか絶対見ない風吹かせてたのに」
「(ドラマ後)私が動画配信サービス漬けになっているのは間違いない」

ドラマを得意とするTBSは、多くのSVODサービスでドラマを配信し、その権利料を最も得ているテレビ局だ。つまり今回のドラマでもSVOD利用者を増やせば、結果的に収入増が期待できる。二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプという挑戦は、目的を一定程度果たしていると言えよう。

一方「君ここ」も捨てたもんじゃない。過激な設定で序盤にある程度視聴者を失ったが、中盤からは一定数を保っている。

「序盤は本当に重かったけど、ここに来てするするっとそれぞれの物語が交差しはじめて脱落しなくて良かった」
「脱落しそうになってるけど最後どんでん返しがあるのかなって思って一応観る」

視聴率が安定してきただけでなく、フジテレビのビジネスにも貢献し始めている。同局は1~3話を放送中はTVerでずっと見られるようにしている。その影響で初回は400万再生超えと、絶好調となった。序盤を見直して、ドラマにハマった人が一定数いるために、中盤以降の視聴率も安定した可能性がある。

さらに同局が運営するSVODサービスのFODも順調だ。SVOD毎日利用者の視聴率が低いが、これはあくまでリアルタイムで見る人の数。逆に言えばFODに加入して見始めた人が一定数出現しており、フジの狙い通りになっている可能性がある。