最愛の母を失い重度の鬱に…貯金は4年で800万円減った
大好きな両親を見送って、1人になった川越さん。一人っ子であるだけではなく、連絡を取り合う親戚などもいない。母親の介護が終わった後は、魂が抜けたようになり、気づいたら2年近くが経過していたそうである。
母親が亡くなってからは、ほとんど家から出ず、食事も最低限しか取っていなかったのだという。近所の人が心配をして、民生委員に話をしてくれて、ある時、民生委員が川越さんの自宅を訪問。そして、魂が抜けたような状態だった川越さんと出会うことになったそうだ。
話をしていても目の焦点が合わず、受け答えも満足にできない川越さんの様子を見た民生委員は、自治体に相談。その後、自治体からカウンセラーが訪問してくれて、生活状況の確認と精神科の受診に繋がった。受診結果は、重度の鬱状態とのこと。川越さんは語りたがらないが、軽度の発達障害があるようだと、私は川越さんの支援者から教えてもらった。
さて、ここからは川越さんがこれから生きていくためのライフプランの話に入る。
【家族構成】
川越彰さん(仮名・63歳)
【資産状況】
預金 約1200万円
不動産 時価約1億円
母親が亡くなった時点で、預金として遺された金額は約2000万円。葬儀代と4年間の生活費で、現在は1200万円程度まで減っている。
川越さんが65歳からもらえる公的年金は、月に9万円程度。国民年金については、母親の介護がスタートした時点で、申請免除の手続きをしていた。
公的年金がもらえるまでには、あと2年弱ある。川越さんの月の生活費は14万~16万円くらいなので、固定資産税の負担を考慮しても、貯蓄で10~12年くらいはなんとかしのげそうだが、川越さん曰く、「今は貯金が減っていくのが何より怖い。貯金が底を突いたら死ぬしかない」と感じるそうである。
川越さんから、「貯金が底を突いたら、生活保護をもらえますか?」と聞かれた。「貯金が10万円を切るくらいまで減れば、資産のほうの申請条件は満たすかもしれませんが、川越さんの場合、自宅の評価がお住まいの自治体の基準額を大きく超えています。自宅を売却して、そのお金を使ってもなお、貯金が10万円を切るくらいまで減らないと、申請はできないと思います」と答えた。
私の言葉を聞いて、「自宅に住んだまま、生活保護をもらうこともできないんですね」と肩を落とす川越さん。「自宅の評価が、お住まいの自治体の基準額以下であれば、自宅に住んだまま、生活保護を受けることも可能なんですが、川越さんのご自宅は1億円前後で売却できるはずですので、無理ですね」
ここで、いったん相談は終わり、後日、改めて相談を受けることになった。