総額4兆円超の地方案件の対応が懸念される

全人代の会期中、中国人民銀行の潘功勝総裁は、「預金準備率に追加の引き下げ余地がある」と述べた。不動産市況の悪化を食い止め、雇用・所得環境を下支えする中銀の姿勢は強まった。

証券監督管理委員会のトップは、投資家が保有していない株を借りて空売りすることをより厳格に取り締まる考えを示した。株価下落時の市場介入も強化するようだ。いずれも不動産デベロッパーなどの延命を重視した政策方針の継続を示唆した。

ところが、住宅相は強硬に不動産業界の整理を進める見解を示した。延命、不良債権処理、どちらを優先して中国が不動産バブル崩壊の後始末を進めるか、落としどころは見出しづらくなった。

懸念が高まるのは、地方政府の対応の乱れだ。記者会見中、倪氏は「地方政府が融資適格と認定した不動産の開発案件は6000件を超えた」と明らかにした。地方政府が認定したプロジェクトへの融資承認額は、2000億元(約4兆1000億円)を超えた。

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足並みが揃わないと金融機関に波及する恐れ

その発言を額面通りに解釈すると、ホワイトリストにどの案件をのせるかは地方政府の責任ということになる。足許、中国の住宅価格は下落傾向が続く。2月、カントリー・ガーデンの販売面積は前年同月比89%減と報じられた。2024年も中国の不動産販売額は減少し、3年連続で不動産市況は悪化する恐れが高い。

一方、中央銀行が金融緩和を強化する。住宅建設などを監督する当局も延命を優先する。政策の方向性が一致する場合、地方政府は中央の政策方針に従って行動すればよい。反対に、政策の方向性が一致しないと、地方政府はどの案件を支援するか二の足を踏むだろう。

地方政府の不動産対策姿勢の乱れは、金融機関などのリスク許容度を減殺する。大手行などが不動産分野への融資に慎重になる恐れは高まった。シャドーバンキング、融資平台など不動産デベロッパー以外の融資も抑制傾向が強まるかもしれない。