コンビニの「おにぎり100円セール」は変則的にやるからお得
消費者目線で考えると、「50%割引」という表示に踊らされて大して欲しくもない商品を次々と商品かごに入れるのではなく、「結局いくら安くなるのか?」という金額の絶対値を気にしてから「買いかどうか」を判断したほうがいいでしょう。
その値段が、高いと感じるか安いと感じるかは参照価格で決まります。しかし、「定価がいくらか?」は、場合によってはあまり関係ありません。
例えば、「ドーナツ100円セール」で、定価200円が100円になるキャンペーンを頻発しすぎると、だんだんとセールのお得感が薄れ、定価の200円ではなく100円のほうが参照価格になったりすることもあります。
そうすると、定価で売られているドーナツが割高に感じてしまい、定価で売れなくなってしまうということが起きる場合もあります。コンビニの「おにぎり100円セール」は、変則的にやるからお得な感じがするのです。
さて、プロスペクト理論のポイントを3つにまとめると、次の通りです。
②お金を1得たときの嬉しさ(主観的な数値)が1だとしたら、お金を1失ったときの悲しさ(主観的な数値)は、−2倍以上になる
③「お得感」は、金額の絶対値(いくら安くなるか)ではなく参照価格からの変化率(割引率)でとらえる
プロスペクト理論を応用した「心理会計」
多くの会社では、給与とボーナスは別々に支給される一方で、所得税は給与天引きされることが多いのではないでしょうか?
「給与とボーナスが同時支給でも、もらえる金額が変わらないのならそれでもいいのでは?」と疑問に思った人もいるかもしれません。
「もらえるもの(給料)ともらえるもの(ボーナス)」、「もらえるもの(給料)と失うもの(所得税)」などのように、複数の利益や損失が絡み合う場合に、「人が一番感じる価値が高くなるように、支給や徴収の仕方を最適化しよう」とするのが「心理会計」です。
そして、これらはプロスペクト理論ですべて説明できます。
例えば、以下のような問題は、プロスペクト理論を応用すると答えを出すことができます。
②所得税と住民税は、別々に徴収したほうがいいか一緒がいいか
③所得税の徴収は、給与天引きがいいかあとから徴収がいいか
④割引をするときは、その場で現金割引がいいかあとからキャッシュバックがいいか
このような日常の様々な例は、プロスペクト理論で最適解を導くことができます。
事例を知ると、いろいろなところにプロスペクト理論が応用されていることに気がつきます。
私たちが特に気をつけたいのは、高額な買い物になるほど鈍感になるということです。
車や高級品はドーンと買ってしまうのに、毎日半額の見切り品を買って食費を削っているという人をたくさん見てきました。細かいところで節約するよりも、なるべく額の大きいところから節約できるものはないかを検討したほうがいいでしょう。