「企業も個人も問題点を明確にすれば、再生は論理的かつ簡単なのです。しかし、劣勢に立つと現実から目をそむけてしまう。これが再生のチャンスを奪うのです。この縮小する市場をどう生きるかには、手本などありません。戦後、日本経済が経験したことがない状況ですから。そんなときこそ重要なのが、数々の生き延びてきた経験則。そして辛い現実から目をそむけないハートの強さが大切です」

そう語る長谷川氏の目から見た“成長する人、停滞する人”の分岐点とはどんなところにあるのだろうか?

『社長の手紙』(プレジデント社刊)を紐解きながら探っていこう。

上昇:プロの仕事ができる人 
停滞:最後までアマの人

レバレッジ(テコの原理)を利かせる、という言葉を、若手社員からよく聞きます。最小の努力で最大の結果を得るというのはビジネスの世界では当たり前の話なのですが、その言葉が若い人から発せられると、正直、『ちょっとこの人は信用できないな』と思ってしまう。

現実のビジネスの中で、この“テコの原理”を考えてみると、本人の努力が力点、結果が作用点。そしてその人が持つスキルや人間力こそが支点です。テコは強固な支点があってはじめて効果を発揮しますが、若いうちからレバレッジという言葉を使っている人は、どうもこの支点の部分で信用がおけない(笑)。本当の仕事のプロになれる人は仕事で楽をせずに限界まで挑戦する人、そして揺るぎない仕事のスキルを持った人です。

――ではどんな人が、仕事のプロになれずに、アマチュアのままで終わるのか?

言い訳が多い人です。私は営業成績が悪い営業マンにその理由など聞きません。それは返ってくる答えが次の2つのどちらかだからです。自社製品の弱みか、不景気のせい。しかし、売れない理由をそういうところに求めているうちはプロではない。プロはどんな場合でも『どうしたら売れるか』を考え抜く人です。