盤石なスターシステムが揺らぐきっかけ

宝塚歌劇のファンは、劇団員を「路線」「別格」「脇」の3種類に分けて呼びます。「路線」はトップになると予測される人。「別格」は重要な役を演じているが、トップにはならないと思われる人。「脇」はトップになる可能性が限りなく低い、いわゆる脇役です。

劇団員のヒエラルキーがハッキリしており、推している生徒の格、ポジションによって、ファンクラブ自体の格にも差が出てきます。

私設ファンクラブは生徒(劇団員)が退団すれば解散になり、また、新たなお気に入りを見つけてファンになっていくという循環を繰り返し、宝塚歌劇団は熱狂的なヅカファンを維持してきました。

しかし、著名な人気スターがいじめに加担し、いじめの事実を隠蔽してきたとしたら、タカラヅカのスターシステムは大きく揺らぐのではないでしょうか。

宝塚歌劇団の理事退任だけでは幕引きにならない

宝塚歌劇団や宝塚音楽学校で行われてきたいじめ、パワハラの実態を明らかにし、Aさんが死に至った問題については、いじめた劇団員の行動の詳細と処分を明らかにすべきです。さらに隠蔽がなぜ起きたのか、コンプライアンス(法令遵守)上、どのような問題があったのかを第三者委員会によって解明しなければ、ファン離れは加速するでしょう。

「清く正しく美しく」と大きく乖離かいりしている姿が、白日の下にさらされ、幻滅してファンが離れても、タカラヅカの真の再生のためには、問題点を洗いざらい公開することが近道になると考えます。今、宝塚歌劇団は大きな岐路に立たされていると言えます。

2月29日、阪急阪神HDの角会長が宝塚歌劇団と宝塚音楽学校の理事を退任しました。しかし、遺族側も、理事の退任で、角氏が責任を果たしたとは考えていません。角氏は、宝塚歌劇団のパワハラ、過酷な労働現場を放置してきたばかりか、隠蔽を続け、問題解決を長引かせてきた責任を取り、自ら阪急阪神HDとグループ企業の要職からも退くべきでしょう。20年以上もトップにいる弊害が出たと言えます。

宝塚歌劇の公演が減り、チケットがプラチナ化しており、「ファン離れ」は深刻でないように見えます。自らのお金と人生を注ぎ込んできた熱狂的なファンや、現在のファンの「囲い込み」ができても、いじめ、パワハラ、理不尽な上下関係を放置し、隠蔽を続けてきた宝塚歌劇団は、このままでは新しいファンを増やせなくなります。

宝塚歌劇の伝統を継ぐためにも、問題としっかり向き合って、再発防止を徹底し、劇団員に対し、金銭的、肉体的に過酷な負担をかけず、安心して演じられるシステムを構築するべきです。そのためには、宝塚歌劇団の労働組合の復活、働く者の人権と生活を守る組織が必要かもしれません。

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