ディグニティセラピーの目的の一つは、質問に答えることで、患者さんがさまざまな記憶を掘り起こし、自分自身やご自分の人生について考えるきっかけをつくることにあります。その過程で、ご自分が生きてきた意味に気づき、人生を肯定できるようになる方が少なくありません。
病気であることがわかってから、ずっと「死にたい」と言い続けていた患者さんの表情が、ディグニティセラピーを受けた直後から穏やかになり、「あのとき死ななくてよかった」とまで言って下さった、というケースもあります。
おそらくその患者さんも、質問に沿って自分の人生を振り返りながら、自分の存在価値を見つけることができたのではないかと私は思います。
自分の生きてきた意味や存在価値を見つける「9つの問」
そして私は、ディグニティセラピーは、人生の最終段階を迎えた人だけでなく、大きな苦しみを抱えている人、自分や自分の人生を肯定できずにいる人にも、気づきと、前を向いて生きていく力を与えてくれると考えています。
過去を丁寧に振り返り、自分自身が生きてきた意味や存在価値を発見する。それはまぎれもなく、頑張って生きてきた自分をいたわること、自分自身や自分の人生を肯定し、受け入れることにつながります。
できれば、信頼できる人と対面し、会話形式で進めていくのが望ましいのですが、9つの質問に沿って導き出した答えをノートに書いてもよいでしょう。
以下に質問の内容を記しておきますので、ぜひやってみてください。
1.これまでの人生について少し教えてください。特に、あなたがもっとも憶えている、あるいはもっとも大切だと考えているのは、人生のどの時期でしょうか。もっとも生き生きしていたと感じるのはいつのことですか。
2.あなたのことで、大切な人に詳しく知ってほしいことや、特に憶えておいてほしいことがありますか。
3.これまでの人生であなたが果たしてきた役割(家族の中での役割、仕事での役割、社会的な役割など)の中で、あなたにとってもっとも大切な役割は、どの役割ですか。どうしてそれがあなたにとってそれほど大切なものなのですか。その~という役割では、どのような役割を果たすことができたと思いますか。
4.これまでやり遂げたことで、あなたにとって、もっとも重要なことはなんですか。もっとも誇りに思うのはどのようなことでしょうか。
5.あなたから、大切な人に伝えておかなければと感じていることや、もう一度時間をとって伝えたいことが、何か特別にありますか。
6.あなたの、大切な人に対する希望や夢にはどんなことがありますか。
7.あなたが人生から学んだことで、誰かに受け渡したいと思うことはありますか。大切な人へ受け渡したいアドバイスや指針にはどのようなものがありますか。
8.大切な人が将来に備えるうえで役立つように、伝えておきたい言葉や、指示などはありますか。
9.この手紙は(大切な人の手元に)ずっと残るものですが、ほかにも入れておきたいものはありますか。
(エンドオブライフ・ケア協会による訳を引用)