報酬が高くても不満は出る

一方で、報酬の高いグループは「自分はこれだけのお金をもらっているからこのつまらない仕事を我慢してやっているんだ」というように考えてしまうので、不平不満を平気で口にしてしまうのです。

このようなことからも、お金がいくら儲かったかというのは結果でしかないということを理解していただけたのではないでしょうか。

いい仕事をしたという満足感が先にあって、その後からついてくるものとしてお金があるのです。雇用を生み出す企業側にとっても、ただ給料を上げることだけで従業員の満足が得られるわけではありません。

お金だけではなく、従業員の働きがいということを考えて、仕事の設計や職場のあり方を追求していくことがすごく大事なことのように感じます。

仕事の満足度はお金では買えない

いつの時代においても、人材育成は経済成長戦略の核になっていきます。一般的な経済学の理論で雇用を考えれば、普通は皆、より報酬が高い職業につきたがると思われがちですが、世の中の雇用の仕組みというのはそれほど単純ではありません。

茂木健一郎『一生お金に困らない脳の使い方』(リベラル社)

アニメーターというのはすごく給料が低いものです。それでも皆、やりがいを持って喜んでやっているわけです。

一方で、伝統的に金融はすごく給料が高いといわれています。実際にファンドマネジャーをやっている人はボーナスが何億円から何十億円という世界です。ところが、皆が皆ファンドマネジャーをやるかといえばそうではないのです。

人間の脳の中では、仕事のやりがいに対する満足度指数があります。必ずしもたくさん稼げるだけがやりがいだと感じるのではありません。アニメーターや芸術家などは、貧乏でもやりがいに対する満足度が高いので、脳は不幸やストレスをあまり感じないのです。

東京芸術大学では、例えば油画専攻は倍率50倍の狭き門なのですから、アートというものはやはりそれだけの魅力というか、魔力があるのです。

彼らはピカソとか、今の若者の憧れでいえば会田誠さんや宮崎駿さんを目指して入っていくわけです。ビートルズにしても、最初はバンドでお金を稼げなかったのですが、自分が熱狂できることをただひたすら追いかけているうちに、あれだけのトップスターになったということを歴史が証明してくれています。

お金よりも大事なのは「熱狂」

現在では、研究の分野でも、いくら博士号を取ったからといっても、引く手あまたの就職先があるわけでもありませんし、一流大学に「栄光の頂点」のような感じで入学しても、将来が約束されるわけではないのです。

このようなことからも、仕事の満足というのは決してお金で買えるものではないということを認識するべきだと思います。

仕事のおもしろさ、やりがいというものは自分で決めるものです。関連産業まで含めれば、自分の夢をかなえる選択肢はたくさんあるわけです。

一人ひとりの仕事の選び方においては、お金も現実的には大事ですが、それよりも自分が熱狂できることは何かということを基準にしたほうが、結果としていいことになると私は信じています。

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