0.5秒トレーニングで感性を磨く

リスク感性を磨くには、0.5秒トレーニングがオススメです。お店でどのレジに並ぶか、電車でどの車両に乗るのか。仕事もそうです。上司の指示にイエスというのか、ノーというのか。企画があがってきたときにゴーサインを出すのか、却下するのか。すべて、0.5秒で見極めるようにします。

0.5秒は、人が歩くときに1歩に費やす時間です。右足を出して0.5秒。左足を出して0.5秒。まさしく歩くスピードで、あなたの目の前の課題を処理していくのです。

0.5秒で判断するのが難しいという人は物事を表面的な現象、すなわちカタチでとらえているのではないでしょうか。たとえば不動産探しで部屋を選ぶとき、「間取りが1DK」、「駅から歩いて5分」、「南向き」といった情報は、その部屋のカタチを示しているに過ぎません。カタチに関する情報は大量で、それらを左脳的に処理しようとすれば、どうしても結論を出すまでに時間がかかります。

物事を瞬時に判断するコツは、まず自分の目的や役割を明確にすることです。「安らぎがある部屋を借りたい」という目的が明確なら、それを価値基準として感覚的に判断すればいい。北向きで日当たりが悪くても安らぎを得られる部屋はあるし、逆に南向きでも窓から見える風景が悪くて安らげない部屋もあります。

1つ1つ条件をじっくり吟味していけば、左脳的な処理でそれらの部屋の総合的な評価を下せるかもしれません。しかし、目的を意識したうえで感性を働かせれば、こまごました情報の検討を飛ばして、いきなり、「この部屋はなんとなく安らげる」という結論にたどり着けるのです。

ただし、感性で判断して終わりではありません。感性で「ここは安らげる」と判断しても、その部屋に本当に住めるかどうかは知性によって検証されなければいけません。まず感性でジャッジを下し、次に制約条件などを論理的に検証していく。この順序を間違えると、判断に余計な時間を要するだけでなく、感性のトレーニングにもなりません。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第4章 感性でリスクを察知する(プレジデント社刊)より)

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