なぜ陰謀論にハマる人が増えているのか

人工地震は関東大震災のときにも言われたようだが、当時はインターネットなど存在せず、SNSでそれが瞬く間に拡散されるということはなかった。

では、誰が何のために人工地震を引き起こしたのか。理由として挙げられたのは、自民党が数々のスキャンダルにまみれ、岸田政権の不祥事を隠蔽いんぺいするためだったというものである。これは、北朝鮮がミサイルを発射した際に言われてきたことと共通している。

能登半島の場合、昨年から群発地震が起こり、それが大震災に結びつく可能性があることを、専門家は警告していた。ただ、一方で、終息に向かいつつあるという予測もなされていて、強くは警告がなされなかった。

そもそも、大規模な地震を起こせるような技術は今のところ開発されていない。それに、能登半島地震では、初期の対応に問題があったのではないかと、かえって岸田政権はその責任を追及された。地震がスキャンダルをなかったことにしたわけではない。

よりによって元日というめでたい日に、悲惨な出来事が起こらなければならないのか。その理由を求めて、人工地震という「陰謀論」を信じる人々が少なからず存在した。

さまざまなことに関して、こうした陰謀論が唱えられ、それが急速に拡散されていくのが最近の傾向である。陰謀論が流行し、それにはまってしまう人々が数多く生まれるようになった。

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善悪二元論では「悪い出来事は悪い神のせい」

宗教学の視点からこれをとらえるならば、陰謀論は「善悪二元論」のバリエーションである。善悪二元論は、この世に起こる善い出来事は善い神によるもので、悪い出来事は悪い神によるものだとする考え方で、そのもとはペルシア、今のイランに生まれたゾロアスター教に遡る。

同じくペルシアに生まれたマニ教でも、善悪二元論は受け継がれた。それを否定したのがキリスト教で、神の絶対性を強調するキリスト教は、善悪二元論を徹底して批判してきた。

しかし、善悪二元論の方が、この世界に生まれる悪の原因をうまく説明できるので、キリスト教の世界でもくり返し登場した。キリスト教会はそれを「異端」として撲滅しようとしてきた。もっとも強力な異端とされたのが、中世にフランス南部やイタリア北部で流行した「カタリ派」である。カタリ派は、この現実の社会を悪の世界として徹底して否定し、キリスト教会についても悪の手先としてその価値をいっさい認めなかった。

解散請求にまで追い込まれた旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の場合にも、世界を神の側とサタンの側に分ける点で善悪二元論の傾向を帯びている。

こうした善悪二元論は、実は戦後の世界全体において圧倒的な力を持っていたのではないだろうか。