母親に会いたくない

大学に推薦で入学することができた猫田さんは、「大学からは親が必要な行事がないから、親のことでもう悩むことないね」と言って祖母と喜んだ。

しかし、成人式の前撮りの日。祖母と着付けに行った猫田さんは、約3年ぶりに母親と再会。どうやら成人した猫田さんを母親に見せてあげようと気を回した祖母が、猫田さんの了承を得ずに母親を呼んだらしい。

「もう会いたくない」と思っていた猫田さんは、「何で勝手に呼ぶの?」と思い、その後3人で食事に行ったが、早く帰りたいとさえ思っていた。

やがて大学を卒業した猫田さんは、IT系の会社に就職。就職前に祖母と母親と3人で食事をしようということになったが、猫田さんは乗り気でなかった。それでも、「ママもIT系の仕事をしているのだから、少しは参考になるかもしれない」と思い、渋々参加。

しかし成人式の前撮り以来の母親は、同棲中の彼氏ののろけ話ばかり。うんざりした猫田さんは、祖母に「早く帰ろう」と耳打ちして早めに退散した。

同じ年、友達の結婚式に出席した猫田さんは、友達が涙ながらに読み上げた両親に向けての感謝のメッセージを聞き、育った家庭環境の違いを突きつけられた。

「私も彼女のような“普通の家庭”に産まれたかった。うちの母のような女の元に産まれてきたくなかったと思い、孤独感に打ちのめされました」

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結婚と再婚

社会人2年目の春に異動があり、9歳年上の男性と知り合った。彼は成人後に両親を亡くしており、お互いに両親がいないという共通点もあり互いにひかれていった。約1年後に結婚が決まったが、目立つことが嫌いな2人は結婚式はせず、猫田さんは母親に結婚の報告をしなかった。

だが、祖母が母親に結婚したことを伝えると、間髪入れずに自分も長年同棲していた彼氏と再婚。理由を聞くと、「本当はもっと早くに再婚したかったが、自分ばかり幸せになるのは悪いので、奈理子が結婚するまで待ってやった」とのこと。さらに、彼氏からは長年子どもをつくろうと提案されていたが、猫田さんに遠慮してつくらなかったと言い放つ。

「母には子どもは育てられないからつくらなかっただけだと思います。恩着せがましく言われましたが、私の結婚に対するお祝いの言葉も御祝儀もありません。私はこれまで、入学祝いも成人祝いも就職祝いも、母からお祝いの言葉はもちろん、金品をもらったことは一度もありませんでした」