「ブランドタウン」はどの沿線に集中しているのか

参考までに、下に東京都の平均所得上位10自治体と、そのエリアを走るおもな鉄道を挙げてみた。

所得が圧倒的に高いエリアは「沿線」とはいえないものの、その次に来るエリアは十分に沿線であり、JR東日本の中央線や東急、小田急、京王の沿線に経済的に豊かな層が暮らしている。また、沿線のなかでも、23区の西側から多摩地区東部に富裕層が暮らしており、その傾向は都県境を越えた神奈川県川崎市や横浜市でも続いている。

東京都の平均所得上位10自治体と、そのエリアを走るおもな鉄道(出所=『関東の私鉄沿線格差』)

その地域そのものの名前が知れ渡り、その地域に暮らすことで人が高い評価を受けるような地域を、「ブランドタウン」といっていいだろう。首都圏の私鉄沿線には、そういった地域があるところが多い。

ひと言で「ブランドタウン」といっても、高級住宅街や、近年の開発で栄えるようになった地域といろいろある。だが、多くの「ブランドタウン」は私鉄があってこそ成立したものであり、鉄道会社がよりよい生活環境をつくり出すことを意識しているというのは確かである。

「西側の路線」に高級住宅地が固まっている

「ブランドタウン」は、東京の西側に多く存在する。東京の東側の代表的な私鉄である東武鉄道でも、「西側の路線」というのは存在する。東武東上とうじよう線だ。戦前から開発された高級住宅街として、ときわ台駅周辺の住宅街がある。私鉄は都市開発に力を入れてきたところが多い。たとえば西武鉄道である。

西武池袋線の石神井しゃくじい公園駅周辺や大泉学園駅周辺は、利便性の高い住宅街として知られる。また、西武多摩湖線の一橋学園駅も、「学園都市」として人気の高い住宅地として知られている。西武鉄道沿線とは直接関係がないものの、西武グループの創業者・堤康次郎つつみやすじろうは国立という学園都市をつくった人物だ。古くからの地域開発としては、京王電鉄の聖蹟桜ヶ丘周辺の住宅地も挙げられる。ブランドタウンは「学園」と結びついていることが多い。

たとえば京王電鉄の仙川駅周辺は、桐朋とうほう学園の一大拠点であり、また白百合女子大学があることでも知られている。小田急電鉄では、成城学園前駅周辺が高級住宅地であり、駅名の通り成城学園がある。ちなみに地域全体が栄えているところとして「ブランドタウン」といえるのは、京王井の頭線の終点・吉祥寺駅のある吉祥寺といえるだろう。同駅周辺は武蔵野市である。