富裕層や学生たちが多く利用している東急電鉄
さて、古くからある住宅地や、「学園」のある住宅地、地域が栄えているところをすべて備えている私鉄は、東急電鉄であるといってよい。
東急はそもそも「田園都市株式会社」として創業し、地域開発を鉄道事業と並ぶ一大事業として取り組んできた。東急における古くからの「ブランドタウン」といえば、東急東横線・目黒線の田園調布駅周辺である。自治体では大田区に属する。田園調布駅周辺には有名人や富裕層が多く暮らし、タワーマンション全盛の時代になる前は多くの人があこがれる住宅街だった。
目黒線で隣にある奥沢駅周辺も高級住宅地である。「学園」といえば、なんといっても東急東横線の日吉駅周辺だろう。慶應義塾大学のキャンパスがあるだけではなく、高等学校や普通部(中学校)があり、ブランド私学・慶應義塾の一大拠点となっている。日吉駅は神奈川県横浜市にある。
そのほかにも、目黒線・大井町線の大岡山駅近くには東京工業大学があり、移転してしまったが「学芸大学」「都立大学」の両駅が東横線にはある。このあたりも「ブランドタウン」といえる。
東急、京王、小田急の沿線は家賃が高い
東急グループが開発した多摩田園都市は、「ブランドタウン」の一大集積地といえる。
高級住宅街では、たまプラーザ駅周辺や青葉台駅周辺があり、いずれも横浜市青葉区にある。住環境の評価が非常に高い地域であり、「住みたいまち」としてかつては多くの人が殺到した。オフィスや商業施設などの集積地としては、二子玉川駅周辺が挙げられる。二子玉川駅は東京都世田谷区にあり、世田谷区内でも活気がある地域として知られている。楽天グループの本社や、玉川高島屋S・Cがあることで多くの人が集まる地域だ。
東京の西側には多くの「ブランドタウン」があるが、もっとも「ブランドタウン」が多いのは、東急電鉄沿線であるといえるだろう。経済的にも文化的にも豊かな層が集まるのは必然であり、東急グループもそういった住民を沿線に集めようと考えていたのではないか。
住宅情報サイト『SUUMO』は、各地の家賃相場を集計し、公開している。地域別で見ると、1K・1DKといった、1人暮らしにおける標準的な住宅でもっとも家賃が高いのは港区であり、11万円となる。次いで、千代田区、渋谷区となる。
いわゆる、「沿線」と呼べるような私鉄路線があるところでは、目黒区が9.7万円、墨田区が8.7万円、世田谷区が8.5万円、荒川区が8.0万円、大田区と杉並区が7.9万円、このあとに武蔵野市、板橋区、練馬区と続く。そのあとに調布市となる。
まず、なんといっても東急電鉄沿線の家賃が高く、小田急や京王がそれに続き、西武も出てくる。墨田区を走るのは東武伊勢崎線、荒川区は京成本線だ。東武伊勢崎線が走る足立区は調布市より低く、京成本線が走る葛飾区や江戸川区は足立区とほぼ同じである。「沿線」として比較的家賃が高めといえるのは、東京の西側である。