高配当株ETF選びでは保有期間を意識することが大切
では、HDV、SPYD、VYMという米国高配当株ETF3銘柄のうち、どれを選べばいいのでしょうか。
単純に分配金利回りが4%台後半~5%台前半と高いSPYDを選びたいところですが、高配当株ETF選びでは「どれぐらい、そのETFを保有するか」という保有期間を意識することも大切です。
保有期間が長いほど、組み入れ銘柄の直近の配当利回りより、業績や将来性、ETFの増配率(分配金の毎年の増加率。数年間の平均値を見たほうがいい)に注目してETFを選んだほうがトータルリターンの向上につながるからです。
2023年7月のHDV、SPYD、VYMの分配金を加味した基準価額の上昇率をみると、VYMが115%(16年1月比)と最も高く、次いでSPYDが89%、HDVが86%となっており、VYMのパフォーマンスがかなり優秀です。
ただ、より短期的な2021年~2022年のパフォーマンスを比べると、この時期は下げ相場で高配当株に人気が集まったこともあり、分配金利回りが高いSPYDの成績が最もよくなっています。そう考えると、
●2年以下の短期保有なら分配金利回りが5%前後のSPYD
●5年以上の長期保有なら分配金利回りは3%台なものの基準価額の上昇に期待できるVYM
というのが銘柄選びの参考基準になります。
HDV、SPYD、VYMそれぞれのメリットとデメリット
VYMのメリットは組み入れ銘柄が462銘柄に達していて分散効果が高いこと、毎年、分配金が増額されていて、安定した増配率に期待できること、さらに基準価額が3つのETFの中で最も上昇していることが挙げられます。
運用開始直後の分配金利回りは3%台と低くなります。
しかし、投資期間が長くなると、毎年、分配金が増額されていくので、自分が購入したときの投資元本に対する分配金利回り(ここでは「自分利回り」と呼びます)がどんどん向上していきます。
これこそ、増配率が高いETFの魅力です。自分利回りの向上だけでなく、増配を好感した基準価額の値上がりによるキャピタルゲインも見込めます。
一方、SPYDのメリットは、とにかく投資開始時点の分配金利回りが5%台前後と高いこと。手っ取り早く、高額な分配金が欲しいという要求を満たしてくれます。
SPYDの組み入れ銘柄は80銘柄で、分散効果は普通レベルといえるでしょう。ただ、組み入れ銘柄の多くは高配当ではあるものの成長性が乏しいため、増配は期待薄。分配金込みのトータルリターンはHDVよりわずかに高いものの、基準価額自体の上昇はあまり見込めません。
HDVはVYMとSPYDの中間に位置するようなETFです。組み入れ銘柄は75銘柄で、分散効果が低い点が難点かもしれません。そこそこ安定した増配に期待でき、しかも投資開始時点の分配金利回りが通常はVYMより少し高い点が魅力といえます。
私個人としては、銘柄分散効果が高く、安定した増配にも期待できるVYMを一番おすすめしたいです。
少しリスクは高くなりますが、HDVも悪くはありません。
投資開始時点でできるだけ高い分配金利回りを求めるならSPYDもあり、というのが結論です。