天才数学者・オイラーが証明を試みるも…

余白が足りないのであれば、フェルマーは別の紙を用意して証明を書けば良かったのではないか、という指摘が読者のみなさんからも聞こえてきそうですが、いずれにしても、フェルマーの最終定理は本当に正しいのかどうか、大きな謎が残されたわけです。

レオンハルト・オイラー(1707~1783)(写真=ドイツ博物館/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

その謎を解こうとその後、たくさんの数学者たちが証明に挑みます。

大きな成果を上げたのは、レオンハルト・オイラーです。数学史上、類をみないほどの天才オイラーであれば、フェルマーの最終定理を解決できるのではと期待してしまいますよね?

ご期待のとおり、オイラーは指数nが3の場合について解決してくれました。指数nが3の場合だけかと思われるかもしれませんが、それでも十分にすごいことなのです‼

とにかく、あのオイラーでも指数nが3の場合だけしか解決できなかったということは、この問題がめちゃくちゃ難しいということをわかっていただけるのではないでしょうか。

「1つ1つしらみつぶし」では、永遠に終わらない

フェルマーの最終定理を証明するためには、指数nが10でも10000でも1億でも、3以上のすべての自然数で正しいと証明しなければなりません。

指数nが3以上のすべての自然数で正しいと証明しなければならないということは、1つ1つしらみつぶしに当たっていったら、永遠に終わらないということです。

そこで、1つ1つの自然数をしらみつぶしに当たるのではなくて、ある程度まとめて解決しようという数学者が登場しました。

その数学者は、ソフィ・ジェルマンという当時では非常に珍しい女性数学者でした。

ソフィ・ジェルマン(1776~1831)(写真=CC-PD-Mark/Wikimedia Commons

ジェルマンは、フランスのパリで生まれ、幼い頃から大の数学好きでした。しかし、当時のフランスでは、女性が数学を学ぶことは、社会的に受け入れられていませんでした。

ジェルマンが18歳のとき、理系のエリートを養成するための学校が創設されました。しかし、入学を許されるのは男性だけでした。そこでジェルマンは男性の名前を名乗って生徒として潜り込み、数学を学んだのです。

ジェルマンの才能はその後、数学者の王とも呼ばれたガウスも認めるところとなります。

自らを男性と偽りつつ、研究結果をガウスに送って意見交換をするようになりました。そして、ジェルマンはフェルマーの最終定理に迫る1つの成果にたどり着きました。