当時では珍しい女性数学者・ジェルマンの「戦略」
ジェルマンが取った戦略は、それまでには無かった斬新なものでした。
指数nに入る数を1つ1つ確かめていくのではなく、たくさんの自然数について一気に証明する方法を考え出したのです。
そのたくさんの自然数とは、5、11、23、29など、素数のうち2倍して1を足したものがまた素数になる自然数です。指数nがこの素数であれば、ある条件の下でフェルマーの最終定理が成り立つことを示したのです。
しかし、彼女は女性であることを理由に、論文で発表することは認められなかったといいます。
ジェルマンが30歳のときに自分が女性であることをガウスに打ち明けました。
その後、ガウスは彼女の業績を称え、自分が所属する大学の名誉学位を授けようと動きましたが、ジェルマンはその直前にこの世を去りました。
ジェルマンは、女性だからという理由だけで正当に評価されませんでした。
しかし、そんな逆境にもめげず偉業を成し遂げたジェルマンは本当に素晴らしいです。
2人の日本人数学者の「意外な発見」
さて、フェルマーの最終定理の証明への道はジェルマン以降もある程度の前進はみられました。
しかし、20世紀に入っても、フェルマーの最終定理が成立しないことが示されていない指数nの候補となる自然数は、まだまだ無限に残されたまま、ほとんど進まなくなりました。あまりの難しさに、多くの数学者は「フェルマーの最終定理を完全に証明することは不可能だ。もう証明は諦めよう」と考えるようになりました。
ところが、フェルマーの最終定理とはまったく関係のないところで行われていた1つの研究が、その後、誰も予想しなかった突破口を開くことになるのです。
その研究に取り組んでいたのは、志村五郎と谷山豊という若き日本人数学者でした。
彼らの研究テーマは、ものすごく変わっていました。
ざっくり言えば、例えば左下のような方程式の問題と、右下のような不思議な絵がつながっているのではないかという研究です(図表6)。
この方程式の問題と不思議な絵が、どのようにつながっているかの説明は、紙面が足りませんので省略させていただきます。