関心と適性を見極めてチームを編成する

円滑なコミュニケーションで会社の生産性を高くキープできるためには、適切な人材を採用する必要がある。メーカーでセールスを担当するデニスは、適切な人材とは、その職種に相応しい関心と適性を持ち合わせている人材であると指摘する。

つまり、仕事内容そのものに興味を持ち、責任感を持って仕事に取り組める人材である。

そもそも、私たちは、まったく関心がない物事については、なかなか吸収することができない。デニスはその人の仕事への関心度を測るバロメーターとして「記憶力」を挙げる。

「覚えられないってことは、関心がないってことなんだ」

この言葉を聞いて、私はちょっとドキッとした。

あなたも心当たりがないだろうか。

自分が好きなことなら自分で積極的に調べるし、忘れる方が難しいほど記憶に深く刻み込まれる。それなのに、つまらない仕事や興味のないことについては、いくら説明されても頭に入ってこないし、すぐに忘れてしまう。

記憶力から関心の度合いを測れるというのは、あながち間違いではなさそうだ。

さらに、今の時代、専門知識は必要だが、それよりも大切なのは「知識の応用力」である。

知識はネットで検索できる。大切なのは、豊富な知識よりも、知りたい情報を検索して見つけ出して、実際に使える力。やはり、関心がないと仕事は始まらない。

また、関心はあっても、仕事への適性がない人もいる。スケジュール管理や状況に合わせた適切な判断ができない人とは、一緒に仕事をするのは難しい。

デニスによれば、デンマークでは信頼をベースにしたマクロマネジメントで動けない人は難しい。自分が細かく管理しないと仕事が前に進まない場合は、部下の適性がその職種に合っていない可能性が高い。

メンバーの関心や適性を見極め、違うと思う場合は、メンバーを入れ替える。そうすることで、チームの競争力を高くキープすることができる。高い生産性を維持するためには、関心や適性に合わせたメンバーの入れ替えは必須なのだ。シビアだと感じるかもしれないが、向かない仕事をムリして続けるよりは、長期的には本人のためになる。

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多様な個性をまとめるための「必須アイテム」

ケネットは、独自のマネジメント哲学を持っている。

専門性も大切だが、採用の際には「組織にダイバーシティを生み出せるか」を意識する。

たとえば、外国人や障がい者を雇用すれば、組織に新しい視点やメソッドを取り入れられる。彼らの社会へのインクルージョンやキャリア形成のサポートにもなるし、職場には多様性を受け入れる寛容さが生まれる。

職場に寛容さが生まれれば、異質な個性を受け入れてリソースとして活かし合える職場カルチャーができる。

会社とは、ミッションを共有するメンバーが、そのミッションを果たすために「多様な個性をリソースとして活用し合う場」である。

そう考えると、メンバーは、似た者同士ではなく、異質な個性を持っていた方がいい。

デンマークの職場は基本的に「多様な個性」で成り立っている。

なぜなら、一人ひとりが役割ベースでその分野のプロとして雇われているからだ。

専門性の異なる多様な個性を持つメンバーが集まって組織が成り立っている。

しかし、多様な個性だけではバラバラでまとまりがつかなくなってしまう。会社のミッションを達成するために、多様な個性をリソースとして活用するには「あるもの」が必要だ。

「あるもの」とは何だろうか。

多様な個性を、さまざまな形をした部品だと考えてみればいい。色んな形をした部品は、それだけではバラバラの部品にすぎない。部品は他の部品と組み合わせることによってはじめて、その部品ならではの「役割」を果たすことができる。

そして、多様な部品が組み合わさった機械をスムーズに動かすためには「あるもの」が必要だ。

大きな機械を思い浮かべてみよう。歯車と歯車がピッタリと上手く噛み合い、大きな機械がスムーズに動くために必要なものは何だろうか。

それは「オイル」である。

それぞれの部品に「オイル」をさしてあげなければ、せっかく部品が組み合わさっても、ギギッと軋んだ音を立てるだけで、なかなか作動しない。作動したところで、それぞれの部品が擦れ合ってブレーキがかかり、再び機械が止まってしまうかもしれない。

「オイル」は、色んな形の部品が組み合わさった機械をスムーズに動かし、フル稼働させるための必須アイテムなのだ。

では、職場において「オイル」とは何なのか。

それは「社会性」である。

デンマークの職場において肝になるのは、じつは良好な人間関係を築くための「社会性」である。