お互いを上手くナビゲートし合わなければ、たちまちカオスになる
形がバラバラな個性的な部品に「社会性」という共通のオイルがさされているから、部品と部品がスムーズに噛み合って高速でフル稼働できるのだ。デンマークの組織の生産性が高いのは、オイルをさした一つひとつの部品がきっちりと噛み合って連動するからである。
「デンマークの職場において『社会性』の重要性を侮ってはいけない」と指摘するのは、建築家のソーレンだ。
「デンマーク人が小さな頃からの教育で身につけてきた『社会性』は、機械を動かすオイルのようなもの」
インタビュー取材でソーレンがこう口にした瞬間、私の視界が開けるように、デンマークの組織に隠された「ヒミツ」が明らかになった。
そうだ、コレだ。「オイルとしての社会性」なのだ。
デンマークのように、ヒエラルキーのないカジュアルな人間関係がある職場は、お互いを上手くナビゲートし合わなければ、たちまちカオスになる。
上手くナビゲートできている職場では、「社会性」というオイルがさされた社員がスムーズに機械を動かしているのだ。
では、デンマークの職場で求められる「社会性」とは何なのか。
その正体を突き止めれば、デンマークの組織の生産性が高い理由がわかるのではないか。
デンマークの職場で求められる「社会性」4つのポイント
生産性の高い職場で求められる「社会性」とは、具体的にどういったものなのだろうか。
それは私たち日本人が思い浮かべる社会性とはちょっと質が異なる「社会性」である。
それは決して、他人に合わせることではない。
ここに生産性の高いデンマークの職場にあるデンマーク式の「社会性」の4つのポイントをまとめる。
第一には、解決志向で、誠実に率直にコミュニケーションをする力だ。
デンマーク人は、何でもストレートに話をする。我慢を美徳とはせず、何か気になることがあれば、課題として取り上げ、解決策を提案する。「臭い物に蓋をしない」カルチャーなのだ。
問題があれば、オープンに問題を共有し、解決策を模索する。
何か疑問を感じたら、ストレートに質問をする。意見があれば、率直に伝える。
社会性のまずひとつめは、解決志向の率直なコミュニケーションだ。
ストレートに意見を言い合う環境で、疑問や反対意見をいちいち個人的に受けとめていたら気がもたない。
デンマーク人がストレートに疑問や意見を伝えるのは、決して、悪意からではない。相手を傷つけようとする気持ちはない。
むしろ、相手を信頼し、一緒に問題に対峙して解決策を見つけられると思っているからこそ、率直に疑問や意見を伝えるのである。
そこで重要なのが、率直に疑問や意見を伝えられたときに「個人的に受けとめないチカラ」だ。
批判しているのは仕事の仕方であって、その人の存在ではない。相手が否定しているのは、自分の意見であって、自分の存在ではない。
何か批判をされたときに、課題と自分を分離して捉える必要がある。
自分の疑問や意見を相手に伝えるときも同様である。
反対意見を述べることと、相手の存在を否定することは別である。相手を尊重しながら、反対意見を述べることもできる。相手を尊重しながら、仕事の仕方に疑問を投げかけることもできる。
自分の意見を伝えるときも、他人の意見を聞くときも、「それはそれ、これはこれ」。自分という存在と切り離して捉える必要がある。
意見の相違を伝え合うことは、お互いの存在を否定し合うことにはならない。
意見が違うからといって、批判されたからといって、相手を否定する必要はないし、自分を否定する必要もない。
問題解決志向になって、問題と自分を切り離し、批判を「個人的に受けとめないチカラ」を身につければ、誠実で率直なコミュニケーションが可能になる。