自分の意見も伝えるし、相手の意見も聞く
では、なんでも言える環境があるからといって、お互いにどんなことにも意見を言い合っていたら、どうなるだろうか。細かいことについてもいちいち意見を言い合っていたら、なかなかスムーズに物事が進まないのは、想像に難くない。
だから「戦場を選ぶ」のだ。
細かいことは気にしない。すべてにこだわる必要はない。
自分にとってそれほど重要ではないことについては「戦いから降りる」のだ。
細かいことにこだわって頑張れば、その部分で多少成果は出るかもしれない。だが、それ以上にお互いのエネルギーの浪費になってしまう可能性がある。
だから、それほど重要ではないほとんどのことについては、妥協して折り合いをつける「妥協するチカラ」が必要になってくる。
もちろん、妥協ばかりでもいけない。
自分のコアな部分に関わる重要なことに関しては、立ち上がって戦う。自分のコアな部分に関わる重要なことについては、自分の意見をハッキリと伝えるのだ。
いざというとき、自分がどうしても妥協できない重大な局面では、立ち上がらなければならない。そこでは、誠実に、率直に、自分の意見を伝えるのだ。
立場に関わらず、みんなが平等に自分の意見を述べる権利がある。
デンマークの職場はヒエラルキーがなくカジュアルだが、みんなが平等に自分の意見を述べられるようにしなければならないという「民主的なルール」がある。
いつ誰が話すのか。自分の番はいつか。自分が話したら、次は他の人にバトンを渡す。みんなが意見を言えるように、守るべきマナーを守る。
誰でも対等に意見を言えるカジュアルなカルチャーがカオスにならないのは、みんなが自分の意見を伝えつつ、それぞれの人の話に対等に耳を傾けるという基本的な姿勢があるからだ。その姿勢があるから、意見の相違を受け入れ、解決志向で穏やかに議論を進めることができる。
自分の意見を伝える。他人の意見も聞く。自分を犠牲にして他人に同調するわけでもなく、他人を差し置いて自分が前に出るわけでもない。競い合うのではなく、お互いを尊重して耳を傾ける。
自分の意見に耳を傾けてくれる信頼できる上司・同僚・部下に囲まれていることは、心身ともに健康に働くうえで、とても大切なことだ。
デンマークの職場では、自分の意見も伝えるし、相手の意見も聞く。そのうえで問題があれば、対話によって妥協点と解決策を模索する。
「適材適所」×「社会性」が最強!
ここで、今まで述べてきたデンマークの組織の強みを簡単に整理しよう。きっと、日本の組織にも応用できるはずだ。
第一に、重要なのは「適材適所」である。
デンマークはジョブ型雇用なので、会社に入社するというよりは、特定の「役職」を担うというイメージだ。もともとその分野の知識があり、仕事内容に関心がある人が応募してくるため、採用の段階から「適材適所」になっている可能性が高い。希望していない部署に配属されることは基本的にはない。
つまり、ひとりの社員は、最初から特定の役割に特化して採用された人材なのである。ひとりの社員がマルチな才能を発揮する必要はない。特定の部品として、ほかの部品と組み合わさることによって、組織における「役割」を果たせればそれでいい。
そこで、第二に重要になるのが「社会性(オイル)」である。
②個人的に受けとめないチカラ
③「戦場」を選ぶ意思──コアな部分以外では妥協するチカラ
④デモクラシーのマナー──みんなの意見を平等に聞く
この4つの「社会性」を兼ね備えることで、人間関係が円滑になり、コミュニケーションがグッとスムーズになる。
「適材適所」×「社会性(オイル)」が組織の高いパフォーマンスを引き出すのだ。