所得制限撤廃で高所得世帯を優遇

小池氏は、「018サポート」と称して、都内に住む18歳以下の子どもに対して、親の所得に関係なく、月額5000円(年額6万円)を支給する制度を今年1月から実施する。

舛添要一『都知事失格』(小学館)

また、「世帯年収が910万円未満」を対象としている私立高校の授業料支援制度について、所得制限を撤廃するという。

公立高校については、国の支援金制度で、所得制限が無くなっている。

この財源は税金でまかなうことになるが、結果的に高所得世帯を優遇することになる。

また、高校授業料無償化については、施設や設備に優れる私立高校の授業料が無償化されることで、公立高校の人気が下がり、定員割れが懸念される。

人気取りのための「ばらまき」

いずれの施策もこうした問題点があり、今年の都知事選をにらんだ小池流のパフォーマンス、人気取りのための「ばらまき」の色が濃いように見える。

こうした「ばらまき」が可能なのは、東京都が地方交付税交付金を国から支給されずにすむ日本一豊かな都市だからだ。

しかし、その豊かさを維持するには、都市の活力を増し、世界中から最先端企業を集めるための投資が必要だ。ただ、冒頭に述べたように、小池都政は東京の地位を低下させている。

小池氏は都市計画についてあまり関心がないようだが、現在行われている渋谷の再開発事業は、私を含め先代の知事たちが残した「遺産」である。

次の再開発は新宿、さらにその次は池袋となるが、現在のところ、こうした問題に小池都知事がリーダーシップを発揮しているフシは皆無だ。

小池氏は自分が興味のない分野、あるいは人気取りのパフォーマンスの対象とならない分野については全て役人任せである。

舛添要一『東京終了 現職都知事に消された政策ぜんぶ書く』(ワニブックスPLUS新書)

ただ、役人としてはそういう都知事のほうがいいのかもしれない。私のように都庁の人事まで細かく指示し、課題解決のためにタスクフォースを設置するような知事は、役人としてはうるさくて仕方がない。

それよりは小池氏のように役人まかせの知事のほうが扱いやすく、騙しやすいのだろう。

マスコミも、小池氏をもちあげたほうが視聴率が取れるし、部数が伸びる。

東京も日本全体もすっかり「小池応援団」ばかりになってしまった感もあるが、その道は東京の地位がますます低下する「奈落への道」だと思われてならない。

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