突発的な力はあるが持続力はない

――日本人の抱く中国の国家イメージと、現実で行われていることの間には距離があるようですね。

戦狼中国は脅威であることに違いはないのですが、それは多くの日本人がイメージするような緻密な戦略があるからではなく、場当たり的で粗雑だからこそ怖い。合理的な判断力を持たず、「愛国的」な建前さえあれば誤った行為であっても誰も修正できず、予測不可能な突発的な動きをしかねない。これが戦狼中国のもっとも恐ろしい点です。

新刊『戦狼中国の対日工作』を持つ安田峰俊氏(撮影=プレジデントオンライン編集部)

こういう話をすると、X(旧ツイッター)などで「それは『したたかな中国』がわざと油断させるための計略だ」と反論してくる人が必ず出てくるのですが、なんら具体的な根拠なく敵を万能視する思考は、ほとんど陰謀論に近い。むしろ、実態と異なる「敵の脅威」を煽り立てるのは利敵行為ですよと言いたいところです。

戦狼中国は強力な爆発力を持つ一方で、持続力はありません。現在のような姿勢は、習近平政権の個性によってもたらされている部分も大きいですし、仮に彼が今後なんらかの理由で権力を失った場合には、体制は一気に弛緩しかんするかもしれません。もちろん、弛緩してからのほうがもっと怖い事態が起きる可能性もありますが。

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