派閥内で語り継がれてきた「錬金術」

こうした問題提起がなされていたにもかかわらず、派閥を有する自民党の総裁であり、自らも派閥の領袖を、首相に就任以後も継続して務めてきた岸田首相は、どのような対応を行ってきたのか。総裁であり派閥の領袖であるにもかかわらず、必ずしも目立った動きを示したとは言い切れないところがある。

つまり、岸田首相の危機感は薄いものがあった。これには第一に、構造的な「錬金術」として長期にわたる実践がある。つまり、これまで数十年にわたり慣習的に行われてきたことであったこと。第二に、国会を取り巻く政党間環境がある。長期にわたる一強多弱状態の中で、自民党は野党には追及する力がないとたかをくくっていたところがあったこと。そして、これが最大のものだろうが、第三に、総裁派閥を取り巻く党内環境がある。

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総裁である岸田首相は、党内第4派閥であり、岸田派の会員は最大派閥の安倍派の半分以下の人数しかない。そもそも「岸田内閣」の成立には、最大派閥の安倍派をはじめとした派閥による合従連衡の中で成立した。そこで、何か問題があっても「党内党」である他の派閥に、リーダーシップを持って指示を出すということははばかられる状態であったこと、そうした中で対応が後手に回ってしまったところがあったのだろう。

内閣支持率は過去最低の23%を記録

結局、岸田首相は、党の派閥の領袖を含む幹部で緊急会合を開き、政治資金パーティーの当面の自粛を、12月6日に決定した。さらに、翌12月7日には、自らが属し、派閥の領袖である宏池会から派閥離脱を表明することとなった。NHKの世論調査(12月8日~10日)では、この岸田首相の行動に対して「遅すぎる」とする回答が66%に上ったという。

こうした問題が大きくなるにつれて、岸田政権の支持率は過去最低を更新することとなった。前掲のNHK世論調査では、2012年の時効の政権奪還以降、過去最低の支持率となり、6ポイント減の23%となった。不支持率も6ポイント増の58%であり、この政治資金の問題が大きく影響を与えていることがわかる。

また、そもそも自民党の派閥のパーティー券の問題であることから、自民党の支持率も急落して8.2ポイント減の29.5%となり、3割を切ったという。政権復帰以降、自民党の支持率が3割を切るのは初である。

野党の支持率も10%を超えるものはなく、支持の上がらない中で、既存の政治に対する不信感の表れなのだろうか、支持政党のない無党派層は43.3%と4.8ポイント増えている。こうした世論に、この「パーティー券」の問題は、多大な影響を与えているといえる。