把握できないほど積み上がる融資残高

中国の不動産バブルの崩壊は、実体経済にも大きな影響を与える。

先に述べた通り、鉄鋼やコンクリートをはじめとした資材関連産業、住宅設備産業などに直接的な影響を与えることは必至で、失業者の増加と実体経済のさらなる悪化を招く。中国の経済指標のマイナス、特に企業物価の下落はこれに起因する。

写真=iStock.com/WangAnQi
※写真はイメージです

当然、銀行の企業向け貸し出しにも大きな影響を与える。当局が公表している中国の6月末の総融資残高は銀行系が230兆元(約4600兆円)、ノンバンク系が134兆元(約2700兆円)、合計で7300兆円規模となっている。

しかし、銀行の資産は確認できても、4割近くを占めるノンバンクの資産は把握しきれない。さらに、企業間や個人間の融資などシャドーバンキングも存在するわけで、それを入れると総融資残高はどこまで膨れ上がるのか見当がつかない。

中国の最大の問題は、政治面にしても経済面にしても都合の悪い事実は政府(中央、地方ともに)が覆い隠すので、問題の大きさや事態の深刻さが正確に把握できない点にある。政府発表の数値とて、果たしてどこまで信用していいのかという危惧は残る。

「白髪三千丈」の国が、実際に成長が鈍っていることを示す数値を出してきたということは、実態はさらに悪いのではないかと考えたほうがよさそうである。

中国政府が公表をとりやめた「ある数字」

経済崩壊が目の前に迫る状況下、中央政府が地方政府の実態すらも把握できていないことがさらに問題である。各地方政府は中央政府向けに数字をつくっている。

中央政府はそれを合算し、さらに都合よく数字をつくる。粉飾企業の末期と同じ状態と言っていい。

総融資残高など、この時の発表の内容はある程度予想されたものであったが、ある事実が「発表されなかった」ことで、かえって社会不安を搔き立てることになった。

中国国家統計局が若年層失業率の公表を取りやめたのである。

政府が経済指標の発表の場で、測定方法の改善を理由に重要な指標の公表の一時停止を伝えるという事態は、いかにも中国的である。まともな企業は、中国を信用して取引をしたら痛い目に遭うに違いないと考えるはずだ。それでも公表しないことにしたのは、要するに、国家としての信頼を失ってでも、「言わぬが花」なのだろう。