言わずもがな、段ボール箱は「梱包材」である。

複数の商品を1つにまとめたり、外圧で傷が付かないように保護したりするのが本来の役割だ。クレームを入れる人たちは、梱包材であるはずの段ボール箱を「商品」と勘違いしているのだろう。

もちろん商品の外観などがプリントされている「化粧箱」であれば、「キズを付けたくない」という気持ちは理解できる。商品をメルカリなどで売却するときも、化粧箱があったほうが高値で売れる。

本稿で私が問題提起するのは、「梱包用の段ボール箱のキズ」についてである。

より深刻な「企業間輸送」の理不尽

この問題は、「宅配」の現場のみで起きているものではない。

生産工場から物流センター、物流センターから各地のスーパーなどの輸送を担う「企業間輸送」の現場でも頻繁に起きており、トラックドライバーに係る理不尽はむしろこちらのほうが深刻だ。

この企業間輸送のトラックドライバーたちが扱う荷物数は、多いケースだと1回の輸送で5000個にも及ぶことがある。

トラックに手積みされた荷物。(読者提供)

彼らの客である「荷主」のなかには、その荷物をフォークリフトではなく、手で1つ1つ積み降ろしさせる「手荷役」をさせるところが多い。

その理由は、「“空気”を運ばせたくない(空間を作りたくない)」や「フォークリフトで使うパレットの返却が面倒」という、荷主都合によるものだ。

この手荷役は現状、ほとんどの現場においてトラックドライバーの仕事であり、「無償」で強制させられている。

手荷役をするということは、1つ1つの荷物にドライバーが触れることになるため、当然、荷物事故のリスクも上がるのだが、企業間輸送の現場では、その段ボール箱にほんのわずかな傷や擦れ、汚れが付いただけで、荷物の受取を拒否・返品させられることがあるのだ。

汚れや破損が1箱でもあると受け取り拒否のケースも

なかでも厳しいという声をよく聞くのが「医薬品」「飲料」「即席めん」だ。

「飲料を運んでいます。商品が入れられている段ボール箱に少しの擦れがあるだけで返品させられます。もちろん中身は無傷です」(20代中型地場配送)

「医療品が入った箱はとにかくうるさかったですね。指でグッと押さえて凹んじゃダメ、製品同士で擦れてもダメ。雑貨と積み合わせだったので擦れて傷付くのを避けるため、助手席に積んで運んでいました」

「某医薬品会社では汚れや破損が1箱でもあると、その1箱だけでなく同じパレットに載っている全てのケースが受け取り拒否になり、発荷主に戻さなければなりません。酷い場合は、(荷崩れ防止のために巻かれた)ラップが擦れて切れてるだけでアウト。超超厳しいです」(40代大型長距離配車兼運行管理者)

読者提供
角が潰れた段ボール箱。最悪の場合は受け取りを拒否されるケースもある。

長距離輸送をすれば、荷物と荷物がこすれ合ったり、荷崩れ防止のためにラッシングベルトなどで荷物を固定させなければならなかったりすることもある。その際、黒ずんだり、跡が付いたりすることは、もはや不可抗力だ。