「毒の入った餌」や「飼い主の写真を掲示」で罰則が科されることも

3 私的制裁により逆に罰則が科されることも

以上のとおり、行政上の対応も、民事上の対応も難しいことが分かったかと思います。

もっとも、どうしようもないからといって私的制裁を加えてはいけません。

例えば、敷地内に毒餌(毒の入ったエサ)をまいて対応しようという話をよく聞きますが、毒餌をまき、犬猫等がこれを食べて死傷してしまった場合には、毒餌をまいた者には、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科されます(動愛法44条1項)。

例え自宅の敷地内に毒餌をまく場合であったとしても、かかる行為が犬や猫等の愛護動物に危害を加える目的である場合には、上記の罰則が科されます。

また、何度も注意をしたにもかかわらず、ペットのフンを持ち帰らない飼い主について、防犯カメラを設置し、撮影した写真を張り出して対応するといった話もよく聞きます。

もっとも、飼い主を晒す行為は、名誉棄損きそん罪に当たるとして、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法230条)。

このようにペットの糞尿等によるトラブルが発生した場合であっても、私的制裁は一切しないよう注意しましょう。

写真=iStock.com/solidcolours
※写真はイメージです

現実的なのは市区町村の看板設置と「イエローチョーク作戦」

4 まとめ

以上のとおり、動物の糞尿トラブルについては、実際のところ法的に対応することは難しいことが多いです。

現実的な対処方法としては、

・市区町村からフンの放置は条例違反である旨を警告する看板をもらう
・放置されたフンの周囲をイエローチョークで囲い、発見日時を書くなどして飼い主に警告する「イエローチョーク作戦」等を実行する

等が現実的です。

イエローチョーク作戦は、公共の場所に放置されたフンの周囲をイエローチョークで囲み、その周りに発見日時や「フンをもってかえってください」等を書き添えることで、飼い主に心理的プレッシャーを与え、フンを回収させるというものです。

イエローチョーク作戦の実施に当たっては、事前の届出を求める自治体もあります。

他にも、放置されたフンの横に警告文の書かれた黄色いカードを貼る「イエローカード作戦」を実施している自治体もあります。

このように市区町村ごとにフン害対策を講じており、多くの市区町村において警告看板や、イエローチョーク等を無償で配布しています。このようなフン害対策をお考えの方は、実施方法を含め、一度お住まいの役所にお問い合わせください。

また度を越した飼い主に対しては、行政や弁護士に相談するなどし、何らかのアクションを起こしてもらうことも考えられます。

2013年には、泉佐野市が全国で初めてフンの放置に対して過料を科しました。飼い主側も、場合によっては罰則が科される可能性があることを十分考慮し、ペットを飼う者としてマナーをしっかりと守る必要があります。

関連記事
「今から行くから待ってろコラ!」電話のあと本当に来社したモンスタークレーマーを撃退した意外なひと言
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由
「ハイフ打ち放題1万円」はリスクが高すぎる…消費者庁が警告するほどハイフ事故が急増している背景
住んではいけない場所を開発している…千葉県郊外で建ち始めた「30坪2500万円の新築戸建て」の根本問題
なぜ「繊細ヤクザ」と批判されるのか…心が疲れやすく生きづらい「HSP」が大ブームになったことの功罪