「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いている

「政治とカネ」の重大問題が発生するたびに、政治家が世の中の批判を受け、政治家や政党自身が「その場しのぎ」的に、議員立法で改正を繰り返してきたのが政治資金規正法だ。そのため、そこには、多くの「抜け穴」があり、政治家本人を処罰することは容易ではない。それが「ザル法」と言われてきた所以ゆえんである。

しかし、実は、政治資金規正法は、単に「ザル法」だというだけでなく、ザルの真ん中に「大穴」が空いているという「重大な欠陥」がある。

「政治とカネ」問題の典型例が、政治家が、業者等から直接「裏献金」を受け取る事例である。政治資金規正法という法律があるのだから、政治家が業者から直接現金で受領する「裏献金」こそ、政治資金規正法の罰則で重く処罰されるのが当然と思われているだろう。

しかし、実際には、そういう「裏献金」のほとんどは、政治資金規正法の罰則の適用対象とはならない。「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に「大穴」が空いているのである。

政治資金規正法は、政治団体や政党の会計責任者等に、政治資金収支報告書の作成・提出を義務付けている。それに違反して、収入や支出を記載しなかったり、虚偽の記載をしたりすることが罰則の対象となる。

裏献金のやりとり自体が犯罪ではない

「裏献金」の授受が行われた場合は、その裏献金受領の事実を記載しない収支報告書を作成・提出する行為が不記載罪・虚偽記入罪等となるのであり、裏献金の授受自体が犯罪ではない。

国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも複数の関連政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から献金を受け取った場合、それらの団体のどこに帰属させるかは、その年の分の政治資金収支報告書を、翌年3月に提出する時に「振り分け」をするのが実情だ。

政治家が直接、現金で政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、いずれの政治資金収支報告書にもまったく記載しないというのが「裏献金」だが、この場合に、政治資金規正法の罰則を適用するためには、どの団体宛ての献金かが特定されないと、どの「政治資金収支報告書」に記載すべきなのかがわからない。

仮に、その献金が政治家「個人」に宛てた「寄附」だとすれば、「公職の候補者」本人に対する寄附は政治資金規正法で禁止されているので(21条の2)、その規定に違反して寄附をした側も、寄附を受け取った政治家本人も処罰の対象となる。

しかし、裏献金というのは、それを「表」に出すことなく、裏金として使うために受け取るのであるから、政治家個人宛てのお金か、どの団体宛てかなどということは、あえて明確にはしない。結局、どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが裏献金である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ。

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