「合法であれば危険ではない」は非常に危険
一方で、薬物の違法性と危険性に過度に重点を置いてきた結果、「違法でなければ問題ない」と考える人が増えた可能性は十分にある。それは違法薬物の乱用防止には効果的だが、合法(危険)ドラッグにはマイナスに作用するおそれがある。つまり、「合法であれば危険ではない」と思って手を出してしまうかもしれないということだ。
薬物の中には違法性と危険性が必ずしも一致しないものがある。たとえば、大麻の場合、危険性はカフェイン程度だとされているにもかかわらず、米国ではかつて政治的な理由で厳しく禁止された(最近は州レベルの合法化が進んでいるが)。一方で、合法(危険)ドラッグは死者が続出するほど危険性があるにもかかわらず、法的な問題もあって完全に禁止できていない。
したがって、人々が本当に危険な薬物から身を守るには違法か合法かだけでなく、個々の薬物の特性をよく理解する必要がある。
大麻グミは薬物政策の失敗を象徴している
その意味で、大麻グミの問題は薬物政策の失敗を象徴している。
「合法だから」と言われてグミを食べ、体調不良を起こした人が続出し、厚労省は急遽、グミに含まれていた大麻の類似成分を規制したが、業者はすでに新たな類似成分を使った製品を販売する準備を進めていても不思議ではない。10年前の危険ドラッグの時と同じで、今回もイタチごっこを止める有効な対策を打ち出せていない。
一方で、厚労省は危険性が低いとされる大麻を厳罰化しようと躍起になっている。皮肉なことに大麻を厳罰化していくと、結果的に若者たちを危険ドラッグに追い込んでしまうおそれがある。大麻の厳罰化は逆に状況を悪化させかねないのだ。
近年の世界的に大麻解禁の流れがあるのは、厳罰政策を失敗だったと認識しているからだ。大麻グミを含めた危険ドラッグの問題とともに、日本の大麻政策も大きな岐路に立っていることは間違いない。