今度は「濁流で生態系に影響がある」と主張
このため、JR東海は10月25日、大井川利水関係協議会を開催して、合意を得る手続きを進めるよう要請した文書を県リニア対策本部長の森貴志副知事に送付した。
それから2週間たって、川勝知事は11月9日の会見で、ようやく関係者に諮る手続きを取ることを明らかにしたのだ。
その会見でも、川勝知事はゴールを変えようと虚偽を繰り返した。
田代ダム案について、川勝知事は「破砕帯を掘ると、濁流が全部県外に流れ、生態系に影響がない蓋然性は極めて低い、強い懸念を持っている」「トンネルを掘れば南アルプスの生態系に影響が出てくる」などと述べ、自然環境への影響の議論が必要などと訳のわからない言い掛かりを何度もつけた。
つまり、自身が主張していた「全量戻し」の解決策が示されると、新たな課題を突きつけるのは従来と全く同じパターンだが、今回は、単なる悪あがきに過ぎなかった。
田代ダム案は、南アルプスの断層帯に向かって山梨県側から上り勾配で掘削するから、湧水は山梨県へ流出してしまう。当然、静岡県の生態系への影響は科学的には全くない。
また取水抑制で流れる水は大井川にそのまま放流されるから水質に変化などはない。つまり、田代ダム案で生態系への影響うんぬんは川勝知事の虚偽でしかない。
河川法を巡るいちゃもんも継続
さらに、「水利権の目的外使用に当たる説明は、非常にグレーである」などと田代ダム案の提案当初と同じ疑問を繰り返した。
昨年4月の提案の際、川勝知事は「JR東海は関係のない(東電の)水利権に首を突っ込んでいる。突然、水利権の約束を破るのはアホなこと、乱暴なこと」などと反発した。
田代ダム案は東電による自主的、一時的な取水抑制であり、河川法上は全く問題ないのだが、川勝知事は頭から「水利権の譲渡」と決めつけた。
それ以来、川勝知事は事あるごとに田代ダム案は水利権の譲渡であり、河川法に触れると繰り返した。
このため、河川法を所管する国交省は、田代ダム案が東電の水利権と全く無関係と公式見解を出した。さらに、川勝知事の嫌がらせに対して、東電は田代ダム案に協力する条件として、県や流域市町などに水利権と無関係であることを了解してもらう条件をつけた。