なぜ「メールの句読点=上から目線」の解釈が生まれたか

海外における英文のカンマやピリオドにも、同様の問題があります。たとえば、ベストセラーとなった『Eats, Shoots & Leaves』(リン・トラス著)においても、マナーとの関係性が記述されています。ところが「『読みやすくする』ということは、相手に失礼なのでは?」と深読みをする人がおそらくいたのです。そこには「句読点をつけないと読むことができないだろう」という見方がベースにあり、それが「相手を見下している」「失礼」と言われる理由につながったのではないでしょうか。

しかし、文部省の案から100年以上も経ち、句読点を打つことが当たり前となっている今、句読点をつけることが失礼……というのは浮世離れしています。こういう類の話題は、食事の席で「へー」と盛り上がる雑学ネタにすればいいものだと思います。

年賀状は句読点を打たないのがマナー

ただその一方で、お祝い事やお悔やみの文面には、句読点をつけないのがマナーとされていることは知っておいたほうがいいでしょう。

句読点が区切りをつけるものだから、切れる、終わる、を連想させるため、縁起が悪いということで、使わないほうがよいとされています。もし手元にあるのなら確認してみてください。結婚式の招待状や後日の御礼状、もしくは喪中ハガキなどは、専門の結婚式サービス会社や葬儀社がつくる際には、句読点が入っていないことがほとんどのはずです。もちろん、これも今後は変わっていくのかもしれませんが、おそらく皆さんも、そうした句読点のないハガキを受けとったことがあると思います。じつは年賀状も句読点を入れないのがマナーとされています。

写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです

しかし、だから絶対にそうしなければならない、ということではありません。どうするかは、それぞれの自由です。マナーは、相手もそれを知っていないと成立しない。知らなければかえって「句読点のない失礼な手紙だ」と思われる場合もあるでしょう。