「従順でいること」が得をする日本社会

「大人なんだから」「もっと大人らしくさ」などと言われやすい大人の方が、子どもよりもむしろ、我慢することを当たり前や美徳とする価値観が支配的かもしれません。上に対して、文句を言わずに従順で、反抗せず、勤勉に、ちゃんと我慢していた方が得をする、という小さな成功体験が沢山積み重なっていくことで、我慢は「普通」になっていくのです。

「我慢する」や「空気を読む」は、役割を分けて、自分に割り当てられた役割を全うする意識といえます。アメリカでは子どもを「小さな大人」として扱うのに対して、日本では子どもを「大人とは別の存在」として扱うことが多いといいます(※1)

お盆やお正月に帰省したりすると、大人は大人同士、子どもは子ども同士で、分かれて食事をしたり、過ごしたりすることがよくあります。子どもは、成人して、お酒を一緒に飲めるようになると、大人側に参加できるようになるものです。

子どもという別の存在から、「人に成る」成人をすることで、大人に加わる感覚です。大人と子どもは異なる役割が分担されていて、それぞれの役割を全うすることが当たり前化しています。

※1 東洋経済ONLINE「「子供嫌い」の日本、アメリカと価値観が違う背景」を参照。

「我慢して当たり前」は健全な状態なのか

こうした役割意識は、会社においても同様で、「指示する側」と「指示される側」がハッキリと分けられて、役割分担されていることが一般的といっていいでしょう。特に日本では、40代以上のマネジメント層が「指示する側」として権限を持ち、20・30代の若手や中堅は「指示される側」として実行に専念することを求められがちです。

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「指示される側」は、その役割を全うできることを重要視されていて、疑問を持ったり、批判したりすることはなかなか歓迎されません。だから、ビジネスの現場に立って実行しているからこそ気づける疑問や課題があっても、我慢して飲み込むだけになりやすいのです。

役割が固定されていて、ある役割の人たちは我慢して当たり前で、我慢できることこそが重要……。それは本当に健全な状態でしょうか。長い歴史を持つ大企業や中小企業が数も多く、力も強い日本と比べて、アメリカや中国では新しいベンチャー企業が次々に生まれて、活躍を広げています。新しく作られるベンチャー企業は、シニア層がほぼいない組織であることが多く、従来の役割分担の垣根を壊すという意味でも重要な存在です。