保険は「お金を調達する手段」でしかない
【美香】でも、30代や40代でがんにかかった人がテレビで「保険に入っていなくて、後悔している」みたいな話をしているのを見ると、やっぱりがん保険は必要かも? と感じてしまいます。
【後田】そうですよね。私も、お客様から連絡を受けて、動揺することがあります。一番動揺するのは、こういう電話を受けたときです。「後田さんの本を読んで、直接お話も聞いて納得したうえで、私は医療保険とがん保険を解約しました。でも、その後、がんが見つかって、正直、後悔しています。後田さんを責めるつもりはないけれど、今の気持ちはお伝えしておきたい」と。
【有司】そういうこともあるんだ。
【後田】今後も、あるかもしれません。電話でお話をうかがいながら、心拍数がどんどん上がるんです。こればかりはどうしようもないです。
【美香】それは、きつそうですね。
【後田】はい。そこで思うんです。お客様の体験談に、これほど激しく動揺する自分がいる。だからこそ、何度でも、がん保険は「お金を調達する手段」でしかないことを、確認したいと。お金のことについて、正しく判断したい。そう思っているはずなのに、いつのまにか、後悔しないことが目的になりやすい。だから、落ち着いて考え直す必要があると、自分に言い聞かせています。
「後悔しないように」と考えてもキリがない
【美香】後悔しないことが目的ではダメなんですか? 後悔はしたくないです。
【後田】そうですよね。ただ、「後で嘆かないように……」と考えたら、際限がないんです。がんの診断時の給付金はもちろん、抗がん剤治療を受けるときとか、通院にも対応してほしいとか、ありとあらゆる保障を足していくことになるでしょう。そうすると支払う保険料はどんどん増えますよ。しかも、保険会社側の取り分が圧倒的に多い取引なんです。保険会社が数十パーセントを取ると見られる取引の機会を拡大することになります。
【有司】そういう……気持ちの整理って、簡単にできますかね?
【後田】いいえ。がんにかかれば、誰でも動揺します。まして、がん保険を解約した後にかかれば、なおさら動揺して、そんなお客様の話を聞く私も、気持ちを整理するどころではありません。お客様は「どうしてくれるんだ?」とはおっしゃいません。それでも、体感としては、そう言われたような感覚が残ります。そこで「だからこそ!」と、自分を落ち着かせる、その繰り返しです。