「日本に行ったら、どこと連絡を取ればいいのか」

余談だが、ある時、私が赴任していたアフリカ某国を、外務省の国際情報統括官組織のアフリカ担当トップが訪れたことがあった。そして、その某国の情報機関の関係者とアポを取って会いにくるという話だった。私はその国の対外情報機関にも国内情報機関にも食い込んでいたが、外務省は私に何も伝えない形で秘密裏に情報機関を訪問しようとしていた。

当然、そうした動きはすべて、その国の情報機関側から私のところに筒抜けだったが、情報機関側も外務省からの訪問者を「どうせ観光で来ているだけだろう」という態度で扱っていた。つまり、普段から日本の情報機関として接触をしていないと、相手にしてもらえないのである。これもまた、日本にきちんとした情報機関を作るべきだと考える所以である。

外国の情報機関関係者は、基本的に日本のシステムをまったく知らない。アフリカ某国で知り合ったCIAやMI6の情報機関員たちから、「日本に行ったら、俺はどこと連絡を取ればいいのか」と聞かれることもあった。もちろんCIAもMI6も東京に支局を置いているのでそこに問い合わせることができる。ただ多角的に情報を取るために、窓口は一つに限定せず、公式なものから個人的なものまで、いろいろな接触先を持とうとしているのである。彼らが公安警察だけでなく、公安調査庁の関係者とも会っているのはそのためだ。

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外交官の肩書で、海外で現地の情報を集めているが…

情報機関全般にいえることだが、基本的には自国の国益あるいは自分の国に対する脅威についての情報を求めている。それこそが帰結するところである。よって、自国について悪く言っている団体や評論家、政治家などがいれば、その団体や人物の背後関係を調べるのは当然のことだ。「こいつは何者だ? 日本のお前たちはどう見ている?」といった具合で質問をしてくるのである。

私が警察庁職員として外務省に出向して在外公館で勤務したように、公安調査庁も在外公館に職員を派遣している。そういう意味では、外交官という肩書で、海外で現地の情報を集めているといえるかもしれない。ただ、決してインテリジェンスを扱うような情報活動といえるレベルではない。在外公館にいてやっていることは、基本的に情報収集と分析で、あとは専門家を探して話を聞くといったことだ。予算もなければ、そうした活動を幅広く在外公館で行う法的な根拠もないので、非常に小さい規模で活動するしかないのが現実だ。