主犯はおそらく海外在住、免許証も海外で偽造
一方、実行犯である「出し子」以外は「おそらく海外にいるのではないか」と岡田弁護士は話し、免許証も海外で偽造しているのではないかとみている。実行犯は捕まっても、海外から指令を出している黒幕は捕まりにくい。
警察庁はSIMスワップによるネットバンキングの不正送金が増加しているとして、対策に乗り出している。昨年9月には総務省と連携し、携帯電話販売店での本人確認の強化を要請し、今年2月までに大手事業者で要請への対応を完了したという。今年上半期のSIMスワップによる不正送金の被害は激減したとも。
SIMスワップによるネットバンキングの不正送金について、濱田さんは「まだなくならないだろう。官民でがんばって減らせても、犯人が完全に捕まっていないのではないか。別の手口が出てくる可能性もあるかもしれない」とみている。
こうしたSIMスワップによるネットバンキングの不正送金に対して、個人はどのような対策をすればいいのだろうか。
群馬県警のサイトでは、「身に覚えのないメールなどを開かない」「怪しいサイトで個人情報を入力しない」「パソコンやスマホにセキュリティのソフトを導入する」「2段階認証にはSMS以外の生体認証などを導入する」などとしている。
銀行口座関連の情報が漏れると、そこから携帯電話会社が引き落とす料金も、電話番号も筒抜けになる可能性がある。一方、今年10月にはNTT西日本の子会社が、約900万件の個人情報を元派遣社員が不正流出させていたと明らかにしている。東京商工リサーチは、上場企業とその子会社で22年の個人情報漏洩・紛失事故が150社、165件で、約593万人分に達したとしている。電話番号などの個人情報はさまざまな形で漏れている。
濱田さんは「できることは十分にやったほうがいい。たとえば、スマホにセキュリティのソフトを入れている人はまだ少ないのではないか。パソコンのOS(基本ソフト)のアップデートなど、対策を二重、三重にしておいたほうがいい」と話す。
犯罪の被害に遭うと、金銭的な損害だけでなく、「メンタルもやられる」と濱田さんは語る。たとえば、泥棒に入られたことが嫌で、その家に住みたくなくなる人がいるという。
くれぐれも、対策をしっかりとるほか、携帯電話が使えなくなったと被害に気づいたときは、迅速で的確な行動をとれるようにしておきたい。焦って関係の連絡先を探し出そうとしても、見つかりにくいことがある。
濱田さんは、必要な連絡先をメモしておき、持ち歩くのも一つの方法という。事前の対策のほか、被害後に事態が大きくならないように、事後の対策も大切になる。