知らない間に携帯電話の番号が乗っ取られ、携帯電話がつながらないと気づいたときには、自分の銀行口座から大金が不正送金されていた――。そんな被害が増えている。名前や生年月日、電話番号などの個人情報が大量漏洩、といったニュースが多い昨今、これはもはやひと事ではない。いったい何が起きているのか、被害の詳細をジャーナリストの浅井秀樹さんがリポートする――。

「SIMスワップ詐欺」知らぬ間に携帯番号乗っ取られる

携帯電話の端末には通話・通信を可能にするSIMカードが差し込まれている。他人の携帯電話の番号を乗っ取る犯人は、後述する方法などで不正に入手したその人物の個人情報を利用して運転免許証などを偽造した身分証明書を用意し、顔写真だけを犯人のものに入れ替えて所有者になりすます。これは完全にプロの手口で、誰もが標的にされる恐れがある。

こうしたニュースに対して「騙されるヤツがバカ」と冷たい反応をする向きも少なくないが、取材者としてはそんなふうに思う人こそバカ、そう強く警鐘を鳴らしたいのだ。

犯人は所有者になりすまし、携帯電話の端末を失くしたとうそをついて携帯電話会社にSIMを再発行してもらい、用意した携帯電話の端末に再発行されたSIMを差し込むことで、あたかも所有者のように携帯電話の番号を自由に使うことができる。一方、所有者の携帯電話は通話・通信が不能になる……。

大量のシムカード
写真=iStock.com/simon2579
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この一連の犯罪は「SIMスワップ詐欺」と呼ばれている。

SIMはNTTドコモ、ソフトバンクなどの携帯電話会社が契約者に提供する。そこには電話番号などの契約者情報が記録されており、端末に差し込むことで通話・通信が可能になる仕組みだ。

最近はインターネットバンキングが急速に普及している。銀行の窓口やATM(現金自動預け払い機)に行かずとも、パソコンやスマートフォンでIDやパスワードを入力すれば残高照会や振込ができる。その際、本人確認のためにセキュリティを高める2段階認証の手段によく使われるのがSMS(ショートメッセージシステム)だ。携帯電話の番号に数桁の数字などのワンタイムパスワードがショートメールで送られてくる。ネットバンキングを利用するにはIDとパスワードに加え、このワンタイムパスワードを入力するとログインができる。