子供自らのワクワクする「探求」が人を成長させる

【岡田】これまでは、前例や習慣に従っていればなんとかなった。でも、新型コロナウイルスにしても異常気象にしても、今までに経験したことがない問題が出てきているんです。だったら、自分でなんとかしなきゃいけない。これが、僕の時代認識の根っこにある考え方なんです。

岡田武史さん(撮影=市来朋久)

【高濱】今、自分が何をやりたいかがわからなくなってしまった大人がたくさんいて、転職サイト隆盛の根っこにあるともいわれている。自分の心を見失っている大人が多いわけです。

ところが、小学生40人をバスに乗せて川へ連れていって、「自由に遊ぼう」って言ったらどうなるか。1年生はオタマジャクシを捕まえたり、石ころを集め始めたりする、3年生はみんなで魚を捕まえる工夫をし始める、6年生は高いところから飛び込みを始めるというように、各自が自分のできることをぱっぱと瞬間的に見いだして、やりたいことを一日中やり抜くわけです。そして夕方になると、全員が「ああ、楽しかった」って言いながら帰っていく。外遊びには危険も伴いますが、それを感じながら必死に遊ぶ。僕は、これが人間の生き方の基本だと思うんです。

実は、大人たちも子供時代にはワクワクすることを夢中でやっていたわけで、本来、その延長線上に人生はあるんですよ。なのに、周囲の余計な干渉のせいで、人目や評価を気にするようになり、自分がワクワクするものを見失ってしまうんです。

【岡田】いやもう、ワクワクするって本当に大切なことで、うち(FC今治)のフィロソフィーも一番が「エンジョイ」なんです。プロだろうが日本代表だろうが、サッカーを始めた時の喜び、初めてゴールした時の感動を絶対に忘れちゃいけない。義務でサッカーをやるようになったら絶対にうまくなりません。

【高濱】来ましたねー。

【岡田】僕は小学校までは野球少年で、中学の部活でサッカーを始めたんです。もちろん初心者。でも、昨日2回しかできなかったリフティングが今日は3回できる、明日は4回に挑戦するんだ、と。時間はかかるけれどちょっとずつうまくなっていく感じに、たまらなくワクワクしていました。手を使うスポーツと比べて脚を使うスポーツは少しずつしかうまくならない。その感じが自分には合っていたんでしょうね。

早朝に学校へ行ってボールを蹴り、昼休みにもボールを蹴って、部活が終わると近所の公園でボールを蹴る。夕飯を食べたら家の前の電柱に向かってボールを蹴る。

【高濱】無我夢中ですね。

【岡田】巨人の星』が流行っていたんで、自分で工夫してタイヤチューブをボールに巻き付けてペンデルボール(ヘディング練習用のボール)を作ったりしましたね。やっぱり、楽しいと工夫をするんですよ。

【高濱】創意工夫されていたわけですよね。それこそ、ザ・探究です。

【岡田】今思えば、ですけどね。