「消しゴムのカスを缶いっぱい集める子は頭がおかしい」

【高濱】僕は「深めていく心の構え」という言葉を使っているのですが、たとえば、こんなことがありました。あるお母さんが、「うちの子、頭がおかしくなってしまいました」と言って、僕のところに缶を三つ持ってこられた。ふたを開けてみると、消しゴムのカスがびっしり詰まっている。お母さんはそれを僕に見せながら、「こんなものを集めるなんて、正気じゃない証拠です」と訴えるのですが、缶の中の消しゴムのカスをよく見ると、長さ別とか色別とか、丁寧に分類されているわけです。つまりその子は今、消しゴムのカスに夢中で、集めたくて仕方ないわけですよ。しかも、集めているうちにいろいろな違いに気がついて、それをきっちりと分類して整理している。僕は、これこそ探究だと思うんです。子供は、遊びの中で常に探究をしているんですよ。

『プレジデントFamily2023秋号』(プレジデント社)
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だから、頭がおかしくなったなんて心配しないで、子供が夢中になっていることをとことんやらせてあげれば、自然に「深めていく心の構え」ができていく。その味を一度知ってしまうと、探究せずにはいられなくなるんです。

だから、遊び込んだ子供は強いんです。消しゴムのカスの分類と整理をやり切った子は、岩石や昆虫の採集に移行していくかもしれないし、星の世界に進んでいくかもしれません。自分がやりたいことを満喫して、すごく楽しかったという感覚を一度味わった子は、「やらされ感」を拒否するようになると同時に、自分の頭で考えるようになっていくんです。(以下、後編へ続く)

高濱正伸さん
撮影=市来朋久
(構成=山田清機)
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