キャリアに一貫性は必要なのか

また、たとえば自分のキャリアに一貫性がないと悩む読者には『きみの人生に作戦名を。』(梅田悟司著、日本経済新聞出版)をお勧めする。ちなみに著者の梅田氏は、このような人物だ。

人生を振り返ってみると、自分でも呆れるほどにやっていることに一貫性がなく、何も長続きしなかったことを告白する。

習い事や塾に通いはじめても、続かないから身につかない。部活に入っても即幽霊部員化。獣医師に憧れるものの大学受験に失敗。仮面浪人をするも結果は変わらず挫折。バンド活動の延長線上でレコード会社の起業と経営。生体材料の研究から、広告制作の道へと鞍替え。育休取得と家事への専念。ベンチャー支援、起業家養成。

やっていることに何の一貫性もなく、何をしているかよくわからない人である。完全に迷走していると思われても仕方ない。

出典:『きみの人生に作戦名を。』(梅田悟司著、日本経済新聞出版)P3〜4

だが、筆者・新井も振り返れば、かなり迷走してきたという自負がある。

部活は野球部、演劇部。高校卒業後、受験予備校にも通わず、人生に迷い畳屋でバイト。一念発起して入った大学の学科は政治。就職氷河期に選択肢のない中、重機械メーカーに入社、人事部配属。転職して人事・業務改善コンサルタント。監査法人グループの会計・ファイナンス兼コンプライアンス担当講師。医療系ベンチャー企業の役員を経て独立。経営コンサルタント、セミナー講師等。

必要なのは「信念の一貫性」

同じく、やっていることに何の一貫性もなく、まさしく迷走している人である。では梅田氏は、この一貫性のなさをどのように捉えているだろうか。

「やってきたことの一貫性」と「信念の一貫性」は別物である。

やってきたことはバラバラかもしれないが、意志や興味に従って行動を起こしてきた。だからこそ、私は私のことを、やってきたことの一貫性ではなく、信念の一貫性で評価することにしよう。

出典:『きみの人生に作戦名を。』(梅田悟司著、日本経済新聞出版)P4〜5

筆者は、梅田氏の見解に大いに賛同する。人は誰しも人生に生きがい(生きる目的)を求めるとするならば、それは、対象は何であれ、その何かを正しいと堅く信じて疑わない気持ち、すなわち信念からうまれ、発するものだと思う。

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したがって、人は誰しも(多くの場合、無自覚に)信念を最重要視して行動するだろうから、やってきたことの一貫性ではなく、信念の一貫性で評価することは極めて重要な意味をもつ。

それは私が「私にとっての生きがいとは何か」を自覚することに他ならないからだ。その上で、自覚した信念に基づく態度や行動にかなった仕事を我が仕事にするか、今ある仕事を組み合わせたり、仕立て直したりするか、今そのような仕事がこの世に存在しないのであれば、そのような仕事を創ってしまえばよい。

これにより、生きがいと仕事は、その追求において一致していく。