自分にとっては重要でないけれど、相手にとっては重要なポイント
返報性の原理を交渉で活かす最大のコツは、自分から率先して「貸し」をつくりにいくことです。具体的に説明しましょう。
前述のように、交渉前に何かをあげたりすることももちろん効果的です。ただ、交渉中に何かものを渡したりすることは難しいでしょう。そのため、交渉中に返報性の原理を生かす最適な方法は、早い段階で譲歩することです。自ら条件面を譲るのです。
ただし、自分にとって大事な条件をいきなり譲歩する必要はありません。自分にとってはたいして重要でないけれど、相手にとっては重要なポイントを探しましょう。
たとえば、私は学校など公的な教育機関で講演をする際の条件では、講演料を重視していません。予算がなかなか取れないことを知っているからです。そこで、依頼する側にとっては頭の痛い問題である講演料の少なさ、つまり相手にとっては重要な条件について、私はすぐに譲歩してしまいます。
すると、私が大事にしたい講演のテーマについてはこちらの意見が通るようになるのです。
1円も発生せず、相手に恩義を与える方法
もし、自分が譲歩するものが何もなければ、相手の話をよく聞いてあげるだけでも返報性の原理は働きます。基本的に、人は自分の話をするのが大好きな生き物です。相手は「自分の話をちゃんと聞いてくれた」と恩義を感じます。
ですから、交渉中はたとえ取るに足らない話の内容だったとしても、メモを取る姿をアピールするなど、相手の話をよく聞く姿勢を示しておくことが重要です。
これは1円も発生せず、相手に恩義をあたえることができる行為なので、交渉中ぜひ意識的にやってみてください。