産業政策の敗北を二度と繰り返さないために
それがあるからこそ、わが国でTSMCは先端分野のチップ製造を目指す。製造装置や関連部材メーカーの製造技術向上をサポートすることによって、最先端、次世代のチップ製造拠点を国内に誘致する可能性は高まる。それはより多くの直接投資の誘致や、回路線幅2ナノメートルのチップ製造を目指すラピダスの成長実現に寄与するだろう。
台湾問題の地政学リスクの懸念などを背景に、台湾から日米欧などへ、これまで以上に半導体の製造拠点の地理的分散は加速するだろう。政府は、民間企業のリスクテイク、製造技術の向上を補助金や税制面から支援し、産業競争力の向上につなげなければならない。人材供給のために、半導体など教育体制の拡充も待ったなしだ。
わが国の産業政策を振り返ると、自動車に続く成長分野として航空機の育成に取り組んだ。しかし、“MRJ(三菱リージョナルジェット)”と呼ばれた航空機プロジェクトは失敗した。先行きは楽観できないが、政府は米欧に引けを取らない半導体産業支援策を取りまとめ、迅速に実行すべきだ。それは中長期的なわが国経済の成長に大きく影響するだろう。