「二重行政解消」を掲げるも静岡市内に県立・市立図書館を建設

記事は、来年度予算要望で懇談した公明党県議団、共産党県議に対して、JR東静岡駅南口に計画した「文化力の拠点」整備に、自民党県議団が反対していることを不満に持った川勝知事が「やくざ、ごろつきの集団」と強い言葉で批判、さらに「県議会はなぜ足を引っ張るのか。反対する人は県議の資格はない」などと述べたことを伝えた。

筆者撮影
無責任な発言が多かった2019年当時の川勝知事の記者会見(静岡県庁)

当初、川勝知事は会見で「撤回する必要はない」「そんなことを言った覚えはない」など否定していた。

静岡新聞記者が「議会の要請があれば、音声記録を提供する」と述べると、前言を翻して、川勝知事は「図書館建設に反対する人はいない。県民みなが欲しいと言っているものに反対するのは公益に反する」などとして、「やくざ、ごろつき」「県議の資格はない」発言を認めた。

最終的に、「文化力の拠点」事業は、県立中央図書館建設のみを残す形で白紙撤回して決着した。その際、「不適切な発言があったことを認め、すべて撤回します」と自民党県議団へ謝罪した。

「文化力の拠点」も川勝知事が前のめりで進めた事業だ。

2014年の「文化力の拠点」計画の立ち上げで、川勝知事は「静岡県に必要な価値の体系」などと訳のわからない説明をした。具体的にどのような施設を建設したいのか全く不明で、理念だけが先行した。

その後、現在の県立中央図書館の床にヒビが入るなど老朽化で移転が求められる状況が明らかになると、図書館を「文化力の拠点」の中心施設に据えた。

2017年6月の知事選で川勝知事は、静岡市を廃止して、県の特別区を設置する「静岡県都構想」を公約の目玉に掲げた。

同構想では、図書館、美術館などの「二重行政」解消を目指すとしていた。

その舌の乾かぬ2019年12月に、静岡市のJR東静岡駅南口に県立中央図書館を建設することを決めてしまったのだ。

静岡市立図書館は他市町に比べて充実しており、県立図書館を静岡市に建設する必要性は薄い。県施設が少ないと不満が多い浜松市にでも建設したほうが、知事の主張の整合性が取れたはずだ。

自身が言い出した「県都構想」とは逆行しているが、ただ当初の「文化力の拠点」が何なのか職員にも理解できず、図書館建設で何とかかたちを繕ったのだ。

結局、「県都構想」は予算も職員もつかず、川勝知事の絵に描いた餅に過ぎなかった。これらが、いい加減な川勝知事の行政運営を示す証拠である。

「独断専行」行政を止めるには対立候補を急いで探すしかない

今回の東アジア文化都市のレガシー拠点となる「発展的継承センター」もあまりに唐突であり、川勝知事が無責任な思いつきで口走ったのだろう。

こんな川勝知事の独断専行の行政運営にストップを掛けられるのは議会の力しかない。

「やくざ、ごろつき」「県会議員の資格はない」とくそみそにけなされた自民党県議団だが、その後1年半もあった2021年6月の県知事選で候補擁立に手間取り、結局、自民党推薦候補は川勝知事に約33万票の大差をつけられ大敗した。

12月県議会で川勝知事と対峙たいじするのであれば、自民党県議団は知事候補者の擁立を何としても急がなければならない。川勝知事の自らの退場を期待するほうがおかしい。

12月県議会が終わると、1年半後には県知事選である。

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