県議会に諮問していない計画を外部に勝手に公表
今回の大騒ぎは、県議会最終日となった13日付中日新聞の記事が火元となった。
『知事「三島に東アジア文化施設を」 議会諮らずに先行発言』との朝刊見出し記事に、自民党県議団は早朝から対応を迫られた。
前日の12日、静岡県商工会議所連合会会長、県内の商議所会頭らが2024年度予算に向けた要望書を川勝知事に手渡した。
その際、観光振興の来年度要望があったことから、川勝知事は、現在県内で開催中の国際文化交流事業「東アジア文化都市」に触れ、「東アジア文化都市のレガシーを発展的に継承したい。どこか、この拠点を求めたい。新幹線が止まるところがいい、三島を拠点に東アジア文化都市のセンターのようなものを置きたい。いま土地を物色している。実際は国の土地を譲ってもらう詰めの段階に入っている。それも買わないで定期借地で借りて伊豆半島の方たちと一緒に使える施設にしたい」などと、具体的な予算化も決まっていない計画案を外部の民間団体に明かしてしまった。
当然、県議会には何ひとつ諮っていない段階であり、事業計画の妥当性をはじめ、今後、来年度予算案の審議などで明らかにする手続きを踏んでいなかった。川勝知事は6月県議会で知事不信任決議案を提出され、1票差で可決を免れたばかり。その後の定例会見で「今後は議会とのコミュニケーションを密にする」と約束していた。
自民党県議は「約束を反故にされた」と紛糾
ところが、「東アジア文化都市の発展的継承センター」という新規事業は、県議会には寝耳に水であり、知事の独断専行で進められていた。議会を尊重するとした約束を早速反故にされたと自民党県議団が考えてもおかしくないのだ。
「東アジア文化都市」とは日中韓の3カ国で、文化芸術による交流発展を目指す文科省主催の国際イベント。2023年は日本の都市に静岡県が選ばれ、ことし12月まで中国の成都市、梅州市、韓国の全州市との間でさまざまなイベントを開催して、文化交流を図っている最中である。
ただ「東アジア文化都市」の認知度は非常に低く、県民にはほとんど知られていない。中国の梅州市、韓国の全州市についても、日本の知名度は低い。
ところが、川勝知事は「東アジア文化都市」に前のめりで、「静岡県を日本の文化都市」にするとして、イベントの最高顧問に、近藤誠一・元文化庁長官、遠山敦子・元文科相、橋本聖子参院議員を起用する熱の入れようだった。
実際は、文科省が毎年、各県を持ち回りで指名するイベントであり、他県で「東アジア文化都市」をきっかけに、そのようなレガシー施設を造ったとは聞いたことがない。
またイベントと言っても、浜松まつり、静岡ホビーショーなど既存の祭りや行事などを「東アジア文化都市」プログラムに含めて、全体の参加人数を水増ししているのが実情である。
イベントが終わってもいない段階で、「レガシー拠点の創出」と言い出すのは川勝知事の独り善がりでしかない。