「3+5=□」はできても「3+□=8」ができない理由

文章題を解くために必要な力① 言葉の力

たとえば、「足す」が「生きた知識」になっているとは、数と数を合わせることだと定義を知っているだけでなく、たし算とひき算がどういう関係にあるのかといった理屈・関係性も理解していること。「3+5=□」はできても「3+□=8」だと答えられないのは、生きた知識となっていないから。教えられた通りならできるが、問題の形式が少しでも変わると答えることができない。

スキーマとは

スキーマとは、生活や学習の経験のなかで培ってきた、枠組みとなる知識のこと。誤ったスキーマが文章題を解くときに邪魔となる。以下は算数に関する誤ったスキーマの例。

「数はモノを数えるためのもの」→割合を示す数がある
「すべての数は自然数だ」→小数や分数がある
「数が増えるときはかけ算を使う。減るときはわり算を使う」→小数、分数の計算では違う
文章題を解くために必要な力② 考える力

5つの能力が必要となる。

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▼推論

関係性を見つけて見当をつけたり、共通するパターンを新しい状況に応用したりする能力。論理的に筋道を立てて思考する力。文章題を解くうえで核となる。

▼実行機能

必要な情報にのみ注意を向けること。また、文脈に合わせて柔軟に注意をシフトできること。この力が弱いと、前の問題でかけ算を使うと引きずられて次もかけ算を使ってしまうことも。

▼作業記憶能力

情報を頭のなかに保持する。計算のときは、数字を覚えておき(短期記憶)、すでに習った演算方法(長期記憶)に照らし合わせて操作をする。

▼視点変更能力

自分中心ではなく、他者の視点でものごとを見ることができる力。算数の文章題では、時間や空間などを扱うときに重要となる。

▼メタ認知能力

自分の行動や知識の状態を客観的に認知する力。ありえない答えになったときに、本当にそれが正しいかを考えることができる。

教える人 今井むつみさん
慶應義塾大学環境情報学部教授。著書に『親子で育てる ことば力と思考力』『ことばの発達の謎を解く』『学びとは何か』、共著に『算数文章題が解けない子どもたち』など。
(構成=プレジデントFamily編集部)
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