思春期の子には善玉コレステロールをたっぷりと摂らせたい

脂質

HDL-Cは、俗称「善玉コレステロール」といわれ、オメガ3系脂質を多く摂取することで高くなります。オメガ3系脂質は人間の脳や神経組織の発育を促進し、その機能を高めることから、記憶力のアップにつながるなど「頭がよくなる」といわれています。

ですから、発達段階の子どもの場合には、70~80くらいは欲しいところです。ところが、姉妹の数値を見ると、Cさんは2年生で60、5年生で57。Dさんは3年生で58と、やや低値を示しています。HDL-Cの不足は、朝起きやかんしゃくと直接の関係はないと思いますが、海外の研究では注意欠陥・多動性障害(ADHD)への治療効果が報告されているため、やはり十分量を摂りたいところです。DHAやEPA(共に体内で合成できない不飽和脂肪酸)はサバやサンマなどの青魚、豚肉や卵に多く含まれています。

炭水化物

TG(中性脂肪)が、炭水化物摂取量の目安になります。摂りすぎると数値が高くなりますが、当院で推奨する目標値は2桁以内。炭水化物(糖質)摂取が多くなると、眠くなったり、逆にイライラしたりします。

Cさんは2年生のときは3桁とやや高値でしたが、5年生で70と目標値内に。一方、Dさんは3桁を超えていたため、摂取を控えてもらうよう指導しました。ごはんやパンなどの主食を減らし、肉や魚をその分多く摂ることで、必然的に減らせるようになるでしょう。

不足しがちな鉄と亜鉛も摂れているかをチェックする

鉄の状態は、フェリチン値が参考になります。先にお伝えした通り、血液内のヘモグロビンよりも先に、肝臓や筋肉細胞内に貯蔵されたフェリチンが減っていくためです。

一般的な基準値は「5~179」ですが、私はフェリチン1桁はいくらなんでも低すぎると考えています。当院では最低でも50、できれば100ほしいと患者さんたちにはお伝えしています。

Cさんのフェリチンは2年生、3年生ともに20~30程度と、不足している状態でした。さらに重症だったのがDさんで、13.9と非常に低値だったのです。また、鉄の利用状態の目安となるTIBC(総鉄結合能)、UIBC(不飽和鉄結合能)については、姉妹共にTIBCはまずまずで、UIBCがやや高め。やはり、鉄不足や栄養不足を示していると推測できました。

写真=iStock.com/pepifoto
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亜鉛

亜鉛はあまり注目されないミネラル成分ですが、子どもの発達障害の分野では、亜鉛不足が最近注目されています。Cさんの血液中の亜鉛も74と低値でしたが、70台ならば、食事改善で十分回復させることができる数値です。そのため、亜鉛が豊富な食材である牡蠣、レバー、赤身肉、小麦胚芽、卵などをしっかり摂るように指導しました。60台まで低くなった時には、亜鉛製剤の内服が必要になります。